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ある日、任務に赴いた、杏寿郎様を見送り、私はまた、煉獄家でリハビリを始めた。
槇「A」
ふと、槇寿郎様に呼び止められた。
槇「。。。。。少し休憩しなさい」
そういう槇寿郎様の手には湯呑が握られていた。
『。。。。。ありがとうございます』
杏寿郎様が柱となった時以来、私は槇寿郎様とまともに顔を合わす事ができていなかった。
私は、少し身をこわばらせ、縁側にたたずむ、槇寿郎様の手から湯呑を受け取り、腰を下ろした。
槇「。。。。。話は聞いた」
その言葉に私は肩を少し上げた。
槇「。。。。。君は強いな」
私は驚きを隠せなかった。
きっと、弱い、軟弱、そのような類の言葉をかけられると思っていた。
でも、槇寿郎様からは想像もしていなかった言葉が発せられた。
槇「。。。。。君は瑠火に似ている。杏寿郎が柱となったあの日、君は私に初めて面と向かって叱責した。息子でさえ、俺の言葉に反旗を翻さなかったというのに」
ポツリ、ポツリと槇寿郎様が続ける。
槇「。。。。。生前、瑠火が言っていた。しっかりしろと。自分がいなくなった世でも、まっすぐ生きろと。愛する者の幸せが私の幸せだと。でも、俺にはできなかった。息子たちのことは大事には思っているが、あいつらが大きくなるのとは対照的に、駄目になっていく自分が惨めで、行き場のない憤りをあいつらにぶつけていた。。。。。」
私は持っていた湯呑を脇に置く。
槇「。。。。。君が杏寿郎を庇い、怪我をしたと聞いたときに、あの時の君の言葉と、瑠火の想いがようやく分かったような気がした」
そう言い、槇寿郎様は空を見上げる。
槇「。。。杏寿郎には大分負担をかけた。申し訳ないと思っている。。。。。あいつは真っ直ぐに育った。だが、時折、周りが見えなくなり、1人で物事を抱え込む時がある。。。。。」
A、と、再度、槇寿郎様が私の名を呼ぶ。
槇「息子を守ってくれたこと、礼を言う。。。。。。杏寿郎を頼む!」
ガバっと私に頭を下げる槇寿郎様。
『。。。っ!顔をお上げください!礼を言うなら私の方です!私のこの命は、数十年前のあの日、あなたに助けられ、今ここにあります!』
そう言い、私も首を垂れる。
槇「。。。。。あまり無茶はするなよ。娘がこれ以上怪我でもしたら、俺も気が気じゃない」
そう言い、槇寿郎様は自室に戻られていった。
娘。
槇寿郎様から、そんな言葉が返ってくるとは思っていなかった私の目からは、大量の涙が溢れた。
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りりむ(プロフ) - ともっちさん» 私もこうして、ともっちさんと煉獄さんについて語る事ができ幸せです!コメント本当にありがとうございます!!! (2020年11月30日 20時) (レス) id: b70c779254 (このIDを非表示/違反報告)
りりむ(プロフ) - ともっちさん» ともっちさん、返信ありがとうございます!最後までご愛読ありがとうございます泣そんな嬉しいことを書いて下さり、感謝感激です泣分かります!煉獄さんの姿を拝めるだけで幸せなんですよね笑何ていうか、存在自体が尊いんですよね泣 (2020年11月30日 20時) (レス) id: b70c779254 (このIDを非表示/違反報告)
ともっち - 短いのに上手くまとまっていて本当に大好きなお話なんです!とにかくシチュが好みすぎます!20回も乗車、凄い!私は4回目の乗車です(笑)本当に辛いけど、煉獄さんに会える嬉しさで見てしまいますよね!煉獄さんを語れる人がいないのでりりむさまと語れて嬉しいです! (2020年11月29日 20時) (レス) id: a55642303b (このIDを非表示/違反報告)
ともっち - りりむさま、お返事ありがとうございます!apricot、最後まで読みました!もう主人公ちゃんの足が元に戻らなくなって、煉獄さんが負い目を感じるシーンとかすっごく切なくて…、でも最後は感動しました(語彙力;)。またapricotを初めから読み返しています。 (2020年11月29日 20時) (レス) id: a55642303b (このIDを非表示/違反報告)
りりむ(プロフ) - ともっちさん» 私も現時点で無限列車に20回近く乗車していますが、いまだに尾のシーンはとても辛いです泣なのでこの話の中で生きている煉獄さんに会えてらいいなと思い書いてみました。ともっちさんもお体にお気をつけてお過ごしください。コメント本当にありがとうございました (2020年11月29日 16時) (レス) id: b70c779254 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりむ | 作成日時:2020年11月11日 11時