浮遊城に集う戦士2【ドラゴンボール×ソードアートオンライン】 (ページ49)

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（97）【第三層】待ち伏せページ49

立ち止まったまま周囲に視線を送り続ける。

右から左へゆっくりと流した視線が、対岸の暗がりに仄かな輪郭の揺らぎを覚えた。その場所にじっと視線を送り続ける。

もしあそこに何者かが潜伏していれば、私が凝視し続けることによってハイドレートを低下させられる。

しかし、もし見当違いの場所を睨んでいるのなら、背後から忍び寄りつつある何者かに不意打ちを食らうかもしれない。

振り向きたい衝動に耐えつつ、対岸の一点を睨み続けること10秒ｰ。

じわりと色彩が歪み、人影が一つ現れる。表示されたカラーカーソルはプレイヤーを表す緑色。

リゼ「お前は…」

確かDKBの新メンバー《モルテ》という男だ。頭から肩にかけて細い鎖をフード状に編んだ鎖頭巾(コイフ)をかけているため顔が完全に見えないのが不気味さを感じさせる。

何故、こんなところで、一人で、ハイドを。

もし、モルテが偶然この場所に居合わせて、私に気付いてからハイドしたのなら、索敵スキルの派生Mod《索敵距離ボーナス》を取っている私もモルテの存在に気付いていたはずだ。

つまり、モルテは最初から身を隠していた。キャンプの裏側の谷底に何者かが訪れることを想定して。

そして、その何者かはエルフ戦争クエストを黒エルフ側で進行させているプレイヤーでしかあり得ない。

現状、それに当てはまるプレイヤーはDBSの数パーティーのみだ。

こいつは、私達を待ち伏せしていた。

その認識に至った瞬間、私の目から殺気のようなものが漏れたのだろう。モルテの右手がぴくりと震えた。

しかし、次の瞬間、場違いに明るい声が張り詰めていた空気を破った。

モルテ「いやあ、バレちゃいましたー」

モルテが音を出さずに拍手の真似をする。

モルテ「さすがだなー、自分、この距離で看破(リビール)されたの初めてかもですよ。しかも最初目じゃなくて勘で気付いてましたよねー絶対。まさか《第六感》とかいうエキストラスキルじゃないですよねー？」

どこか少年っぽい無邪気さと、芝居っぽいわざとらしさが同居した声だ。
私は冗談めかした質問には答えず、相手の正体を確定させるべく口を開いた。

リゼ「君は、DKBのモルテだな？」

すると、モルテは再び拍手の真似をしながら言った。

モルテ「おー、さすが情報が早いですねー。いかにも自分、モルテってもんです。名前の由来はとってもモテるからじゃあないんですよねー残念ながら。あはははー」