太陽 #short story (ページ38)

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『笑わんとってね…？』

「え、なに、怖いねんけど」

『…あの衣装着た晋太郎が、その、新郎に、見えて』

ベスト、白スーツに身を包んだあの姿
BGMがラブソングだから余計にそれを連想させられた

あと、わたしの願望も少なからず
いや………きっとそれが大半を占めていたからだと思う

「なあ、それほんまに？」

『うん…』

「笑わんとってな？」

『え？』

「俺もあの衣装着て鏡見た時思ってん」

晋太郎が恥ずかしそうに髪の毛をかきあげながら
わたしの方を見る

「結婚式みたいやなぁって、
そしたら無意識にAのウェディング姿想像してて」

『うそ…』

「それからもうそのことが頭から離れんくなってさ」

わたしと同じことを想像してくれてたってことも嬉しいけど
それ以上に、晋太郎の中に"結婚"っていう未来が
浮かんできてくれたことに泣きそうになる

あんまり、そういうのに興味無さそうに見えてたから

「それでさ、たまたま、ほんまたまたまやで」

すると晋太郎が立ち上がって
置いてあったカバンの中から何かを取り出した

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「コンビニ寄った時目に映って買ってん」

『いやこれって…』

目の前に差し出されたのは
有名なウェディング雑誌

『普通女子から持ってくるやつ…』

「え、そうなん？ってA？ちょ泣いてるやん」

堪えられなくなった涙を隠すために
下を向いていたのに顔を覗き込まれてしまった

「結婚、してくれますか？こんな俺やけど…」

そんな言葉、聞けるなんて思ってなかった

『晋太郎がいい…』

「なんて…？」

『晋太郎としか結婚せえへん…！』

「おわっ」

いきなり抱きついても
しっかり受け止めてくれる大きい体

頬に当たる煙草の匂いのする長めの髪の毛

全部全部わたしにとってはど真ん中だから

「世界で一番、とは言えへんけど
大阪の中では一番くらいには幸せにしたるからな！」

『楽しみやなあ』

きっとこの人の隣にいれば
ずっと笑顔でいられる気がする

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