太陽 #short story (ページ32)

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「おわ、ちょ今度は泣いてるやん」

『っ、ぐす…ごめんな、さい』

「いや全然ええけど…」

なんで泣いているのか分からない
そんな表情を浮かべて少し慌てた辻さんは
わたしの頭をぽんぽんとたたいた

「これも…俺のせいやんな？」

あれ、もしかして気づいてる？

「だいぶ会われへんかったもんなあ」

『…会えなくて死ぬかと思いました』

「ふは、Aってウサギやったん？」

こんな何気ないやり取りすら嬉しくて
またわたしの涙腺が緩みそうになる

けれどそれを止めるように
辻さんの指がわたしの目元に触れて涙を拭ってくれた

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「ていうか知らんうちに随分と積極的やん」

『へ…』

「俺のこと引っ張って個室連れてきたり、強引に抱きついたり」

ぽた、と冷や汗がおでこにつたった
あの時は冷静やなくて完全に衝動やったから…

でもそんな言い訳通用するわけ無い
と思っていたら辻さんの矛先は意外な方向に飛んでいた

「誰の入れ知恵？」

『誰ってそんなんないですよ』

「山名さん辺りの悪い先輩やろ？」

とばっちりを受ける山名さん
すみません、今だけは彼のこと許してやってください

するとまたわたしは辻さんの腕に抱き締められた

「…気に入らんな」

『辻さん？』

「今日俺にやったこと、絶対他の人にやったらあかんで」

『やりませんよそんな』

「いいやAは自覚ないからなー、危険」

何の自覚がないのかわたしにはさっぱり
けれど背中に回った腕の力が強くなったことに
辻さんの意志を感じた

「出番同じ時はなるべく俺の隣おること、ええな？」

『えっ、で、でも恥ずかしいです』

「Aに選択権ないねん、これ絶対」

初めて剥き出しにされた独占欲

このドキドキに
わたしは果たして耐えれるんやろうか？

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