太陽 #short story (ページ12)

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LINEのやり取りは3日前で止まったまま
いつもならはよ帰りたくてタクシー飛ばすくせに
今日は少し手前で降りてしまうくらい家までの足取りが重たい

そんだけ自信がなかった
もうAは家におらんかもしれん
そんな最悪の事態ばっかりが頭ん中を支配する

ふぅ、と深呼吸をする
いつもの何倍も重たく感じる鍵を回して開いたドア
おそるおそる中を覗くとリビングの電気は点いてるみたいやった

「ただいまぁ…？」

あれ、いつもやったら奥からおかえり！って来てくれるんやけど…
冷や汗が背中をつたいつつ、意を決してリビングに入ると
ソファで静かに眠る愛しい姿が一番に目に入った

「あーよかった、Aおった……」

『……っん、え、びっくりしたあ』

「ごめん、起こしてもうて」

『ううん、全然。帰ってくるの待ってたから』

あまりの安心感に寝てるのも構わず抱きついた
3日前のことなんて夢やったんちゃうかと錯覚するくらい
目の前の彼女はにこにこしてそんなことを言う

「あの……怒ってないん？」

『え…？』

「大阪行く前の晩、キツいこと言うてしまったから」

『…あ、うん』

「ほんま、ごめん」

いつまでもAの優しさに甘えてたらあかん
俺やってちゃんと伝えな、離さんように手掴んどかなもうきっとチャンスは無い
そうやんな？ゆずる

「俺な、もう後悔したくないねん」

『……賢ちゃん？』

「仕事で一番欲しかったもんはあと少しのとこで手に入らんかった。これ以上ないってくらいしんどい思いも味わった」

でもそのおかげで今の俺があって
守り抜いていきたいプライドも得られたもんもたくさんある
そして何より

「俺にとってAはもうそんくらい大切で絶対失いたくない存在やねん」

『………わたしだっていられるならずっと賢ちゃんの側にいたいと思ってるよ』

「ほんまもう…」

なんでこんなに言うてほしい、
俺の気持ちを全部包んでくれるようなあったかい言葉をくれるんやろうか

「愛想尽かされんように俺もちゃんといろいろ頑張るから」

『それって、例えば？』

「例えば…………A、大好きやで」

あーアホみたいに体熱い
こういうのムズムズするしあんまり言わんからな…

まあ、でもAの照れてる顔かわいいし
たまには言うてみるんもええかなあ

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