Bitter Cream Soda

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その様子を見ていた嶺亜くんに

「おねーさん、もしかして俺の事知ってる？」

じっと顔を覗き込むように言われて

ぷるぷると顔を横に振ってみたけど、

「ぷ。バレバレ」

なんて、鼻で笑われた。

「‥内緒に出来る？」

ヒソヒソと悪戯っぽいその声に、首がもげそうなほど、プンプン、と頷いた。

「じゃあ、俺とおねーさんだけの秘密ね」

ふふ、と笑うその顔はなんとも美しくて。

目眩がしそう‥。幸せ‥。

うっとりと、幸せを噛み締めていると、嶺亜くんは隣に来た80代の患者さんと仲良さそうに話始めた。

「あっ寅子ちゃん！今日会えるかと思って、かりんとう饅頭持ってきた！後で一緒に食べよ？」

「れいあちゃんありがとねー。そういえばこの前、れいあちゃんそっくりな子がテレビに出てたよ。なんだか絵を描いたりしてたねー」

「ふーん。そいつ俺よりカッコよかった？」

「れいあちゃんより男前の人なんて見た事ないわー」

なんて、ほのぼのとイチャイチャしていた。


さっきの『内緒』は、SNSにあげないでって意味じゃなくて、自分がアイドルだってみんなに言わないで、って意味か‥。


もちろん守秘義務があるし患者さんの情報ペラペラしゃべる気なんてないけど‥。

嶺亜くん、これだけテレビとか雑誌に出てるのに、バレてないとかある‥？

そう思ったけど患者さんはみんな後期高齢者だし、職員も年齢層高めの人ばかりで‥ホントにみんな気付いてないの？

昔から来てるみたいだし、一般人の扱いしなきゃ、だよね‥。


そう決意して、あくまで看護師と患者さんの関係を崩さないようにしよう、と努めた。

心の中では『嶺亜くん』と呼んでいるけど、

診療所に来た時は『中村さん』と呼んで。

でも電気治療の取り付けの時にはやっぱり緊張して手が震えたりして。

嶺亜くんの方は

『おねーさん』呼びだったのが、二回目に来た時は名札を見てか、苗字にさん付けで呼んでくれるようになって。

三回目に来た時には他の患者さんが呼ぶのを真似て、下の名前にちゃん付けで呼ぶようになった。

‥患者さんたちは孫を呼ぶようにちゃん付けしてくるんだろうけど、嶺亜くんまで！

嬉しくてたまらないけど。

緊張する！！！

‥そうは言っても、長年恋焦がれた『推し』と、『患者さんとスタッフ』の関係でも、知り合いになれるなんて。

夢みたい‥。

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