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大光くんのアパートへ向かう道で、大光くんはずっと黙ったままだったけど、ふいにわたしの手を握って言った。
「俺もさぁ、少しはヤキモチ妬いたり束縛したりはすると思う。
でも嫌なことは嫌って言ってほしいし、間違ってる事あったら教えてほしいんだよ‥」
何故だか不貞腐れたような、悲しそうな声だった。
「大光くん、女の子は自分の色に染めたい、って言ってなかった?」
ちょっと気になってた事をふと聞いてみたら
「あー。お前はくだらない俺の冗談に笑ってくれるからな。それってもう俺の色に染まってるって事だよ」
大光くんはそう言ってちょっと照れくさそうに笑った。
「そんなんでいいの?」
「‥充分だよ。
もっと言えば、隣にいてくれるだけでいいし。
さらに言えば、生きててくれるだけで嬉しいよ」
「それだけでいいの?」
「うん‥充分、幸せ」
そんな風に言ってくれる人と一緒に居られるなんて。わたしの方こそ幸せだな‥。
そう思ったけど、なんだかそれを上手く伝えられなくて。
「大光くん‥これからよろしくね‥」
そんな言葉だけ呟いて、朝が近づいて白くなり始めた空を見上げながら歩いた。
大光くんはわたしにベッドを使わせてくれて、自分はその隣に布団を敷いた。
改めてわたしの荷物を大光くんのアパートに運んで、一週間経っても二週間経っても、それはそのままで。
さすがに気になって聞いてみた。
「大光くん‥どうして何もしないの?」
「だからさぁ!隣にいてくれるだけでいいんだって!」
大光くんはなんだかぷりぷりと怒ったみたいに言って、その後に毛布を頭からかぶった。
「ちゅーしたいなぁ」
「は?」
「ちゅー‥したい」
聞こえていた筈なのに反応が無い。
気になって大光くんの顔を覗き込もうとすると、
「お前それズルいって‥」
大光くんはかぶっていた毛布から頭だけを出して、急いでちゅ、とキスをしてからまた頭から毛布をかぶってしまった。
「ね‥ちゅーだけ?」
もう一度毛布をかぶって芋虫のように丸くなった大光くんの背中を揺すると、
「あーもう!お前、小悪魔か!」
大光くんは半分怒ったような口調でわたしに馬乗りになってきた。
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りぷる(プロフ) - ひとみさん» この短編集、勢い余って2も作ってしまい、またネタ切れになる未来が見えるので、またアイディア等ありましたら教えていただけると嬉しいです♡ ファンって言っていただけるの、すごく嬉しいです♡いつもありがとうございます♡ (2022年9月19日 20時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - ひとみさん» かりんとう饅頭、食べたことないです!食べてみたいです。笑。嶺亜くんのブログからお借りしました。ハッピーエンドじゃなくても納得していただきホッとしました!もっと甘々な感じのお話も書いてみたいのですが、なかなか難しくて‥修行します! (2022年9月19日 19時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - ハッピーエンドではなかったけどお互いが納得できていて、素敵な表現でした(^ ^)前からだけど、さらにりぷるさんのファンです♡ちなみにかりんとう饅頭の地域の方ですか?前に嶺亜くんがブログに書いてたからかな?私の地元の和菓子屋さんに良く売ってました^ ^ (2022年9月19日 18時) (レス) id: 2aa4395928 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - ひとみさん» ハッピーエンドに出来なくてすみません(汗) 次はもう少し幸せな感じで書きたいです‥。年上組(わたしの中では)書きづらくて‥アイディア提供していただき助かりましたし嬉しかったです♡ また良かったらお願いします♡ (2022年9月19日 4時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - りぷるさーん!遅くなりましたが嶺亜くんの全部読みました!感動( ; ; )中途半端なアイディアで、返って描きにくくなってしまったのではないかと心配でした。でも嶺亜くんらしさたくさんできゅんでした(^ ^)ありがとうございました♪次は大好きなYさん!楽しみです♡ (2022年9月19日 1時) (レス) @page46 id: 2aa4395928 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りぷる | 作成日時:2022年5月29日 13時