Bitter Cream Soda

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並んで、色んな話をした。

矢花が組んでるバンドの話。

わたしが今まで経験したバンドの話。

キーボードの奴の性格の悪さに振り回されてる話も、矢花は苦笑いしながら聞いてくれた。

それから音楽談義に花が咲いて。

ふいに矢花はわたしの声を褒めてくれた。
　


「Aさん、いい声っすね。

俺‥Aさんの声、好きです。

パンチ効いてるのに、高音は甘くて。

なんか、聞いてて切なくなる」

「好きなの‥声だけ？」

照れ隠しと、ちょっと困らせたくなって、そんな質問をしたのに、

矢花は声を出さないで、目だけで笑った。



それから、お酒の勢いを借りたくて無理矢理グラスのジンを喉に流し込んでから、矢花に耳打ちした。

「ね、矢花？‥内緒の話、教えてあげよっか？」

「？何です？」

「矢花、超好み」

矢花は一瞬目を丸くしたけど

「はは。光栄っす。笑」

と、さらり、と笑って聞き流そうとした。

「‥する？」

そんな台詞、言ってみたけど。矢花の顔をまともに見れなくて。

横顔のまま、何かを誤魔化すように、グラスを回してカチャカチャと氷の音を立てた。



「Aさん‥彼氏、いるんですよね？」

「いるよ？愛情なんか、とっくに無いのに、束縛だけしてくる、モラハラ野郎」

「愛してるから束縛したいんじゃないんすか？」

「矢花って若いねー」

「馬鹿にしてます？笑」


そんな会話の後に、笑った矢花の隙をついて自分の唇を押し付けて、ジンの匂いのする氷を無理矢理に矢花の口の中に入れ込んだ。

ガリ、と音を立ててその氷を噛み砕いた後に、矢花は半笑いしながら言った。

「酒くさ。笑」



それからひとしきり笑った後に、急に真顔になって矢花は呟いた。



「俺‥好きな人居るんです。

大事な人で。一生打ち明けるつもりは無くて。

その人の事は絶対失いたくないけど‥忘れてみたい」

矢花は怒ったような泣いているような顔をしてそう打ち明けた後に、わたしの目をじっと見てきた。


「忘れさせてあげよっか‥？」

そんな風に慣れた女ぶって矢花の頬を撫でてみたけど、

内心は心臓がバクバク言ってた。


矢花はしばらく沈黙していたけど、音を立てずに溜息をついた後、脱ぎ捨ててあったパーカーを掴んで

「‥行きますか？」

と、甘くてちょっとざらついた声で言った。

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