白緑 1 ページ36
職業柄、花をよく貰う。
舞台やライブの期間は特に。
「持って帰っていいよ」なんて、
スタッフさんに言われるけど、
みんな面倒がったりして大量の花が置き去りにされる。
そんな中、家族が喜ぶから、なんて理由で、
いつも貰って帰るのは俺とだかさんの2人だった。
あれこれと花を選ぶ間の時間が俺の密かな楽しみで。
他愛無い話をしながら、ふたりきりになれるのが、特別な時間のように思えて、嬉しかった。
「あ、これ綺麗」
だかさんが目を留めたのは、鮮やかな色合いの花が多い中、珍しく白を基調としたアレンジメントで、白い薔薇がメインの物だった。
「要る？白は矢花の色だから」
だかさんはそんな風に俺に花を差し出しながら微笑んだけど、
本当に白が似合うのは俺なんかじゃなくだかさんの方だ、っていつも思ってる。
「あー、これだかさん向きかも。美味しそうな匂いしますもん」
匂いを確かめるように白い薔薇に鼻を近づけると、だかさんも同時に同じ花束に顔を寄せて、一気にふたりの距離が近くなった。
そういうとこ‥。
赤くなった顔を見破られないように必死に隠したけど、だかさんはそんな事は何も気に留めてないような笑顔で言った。
「ホントだぁ！リンゴみたいな匂い」
だかさんの笑顔を引き出せたのが嬉しくて、自分の発言にひっそりと満足する。
「ピンクとか赤の薔薇はいかにも薔薇、って香りなのに、白だけリンゴみたいですね」
「リンゴもバラ科だもんね。リンゴの花って白いから‥関係あるのかな？」
ちょっと首を傾げながら、嬉しそうに白い薔薇の花を抱えるだかさんの姿を見て、俺はまたひっそりと満足した。
白い薔薇はだかさんのイメージ。
華やかなのにそれでいて清らかな佇まいや
その爽やかな甘い香りもだかさんの雰囲気に近しく思えた。
男の人と花を結びつけるなんて変かな？
でも俺にとってのだかさんは、花のような人で‥。
そんな思いを誤魔化すように
「美味しそうでも、生で花びら食べちゃダメですよ？」
なんて茶化して、わざと睨んだような顔をしてくるだかさんの可愛らしい表情に、また満ち足りた気分になりながら帰った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぷる(プロフ) - 39さん» 心配していただいてありがとうございます。消す消す詐欺みたいになってしまってなんだか恥ずかしくなっています（汗）ライブで元気そうと言うレポや嶺亜さんのブログを読んで少し気持ちが前向きになれました。皆さんの優しさに感謝してます。39さんもご自愛くださいね。 (2022年8月7日 19時) (
レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
39 - 先日感想を書かせていただいたばかりなのにこんなことになってしまって、なんと申し上げていいかわかりません。ただ、りぷるさんの書かれたものは私を優しい気持ちにさせてくれるものばかりで出来れば残しておいていただきたいです。今はどうか心身ともにお大切に。 (2022年8月7日 14時) (レス) @page40 id: 0f338db0b1 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 奈々さん» こちらこそ読んでいただいてると思ってなかったので、驚きと同時に緊張してきました（汗。笑）暖かいお言葉ありがとうございます。奈々さんの作品にもまた出会えますように。 (2022年8月6日 14時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
奈々(プロフ) - まさか自分の作品を読んでいただいてると思ってなくて今少し動揺してます笑。ゆっくり気持ちが回復したら、りぷるさんのタイミングでまた書いてくださるのをお待ちしております！ (2022年8月6日 2時) (レス) id: 514e0f8434 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 奈々さん» 自分の書いた物にも嫌悪感が出てしまって、消した方がいいのかと一時悩みましたが‥皆さん暖かい言葉かけてくださって‥ありがとうございます。わたしもいつかまた奈々さんの描く可愛い克樹くんに会えるといいな、と思っています。 (2022年8月5日 7時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りぷる | 作成日時：2022年1月21日 21時
