3 ページ6
次の日の収録。
お互いに妙にテンションが高い。
ちょっとした事でも楽しげに笑って手を叩いたりした。
俺は、上手に心を隠せてるかな。
矢花、きのうちゃんと眠れたかな。
心配になるけどもう口には出せない。
自分で決めた事だけど、やっぱり辛い。
手を伸ばせば矢花に触れられる距離にいるのに、すごく遠く感じて‥
矢花が恋しくて仕方なかった。
撮影終わり、ぐちゃぐちゃになった心を抱えながらひとりで帰ろうとしてると、嶺亜から呼び止められた。
「克樹。忘れ物」
首根っこを掴まれた矢花が所在なさげに俯いて嶺亜に連れてこられた。
「撮影終わった途端にボロ雑巾みたいになってるの拾った。これ、お前のだろ」
嶺亜は矢花の背中を押して俺に押し付けながら呆れた声で言った。
「そろそろ釘刺そうかと思ってたら‥お前ら極端なんだよ。0か100しかないわけ？」
‥全部嶺亜にはお見通しだったのか。
なんだか恥ずかしくなって俺も俯く。
「ちゃんと話せ。ふたりで」
最後は優しい声で言って嶺亜は帰っていった。
薄暗くなった控室の中、しばらくふたりとも俯いたまま何も言い出せないでいたけど、
「嶺亜くんに頭上がらないっすね‥」
矢花がようやく呟いた言葉に
「ま、頭上がらないのはいつもの事だから」
苦笑いしたら矢花はフッと声を立てて笑った。
なんだか久しぶりに矢花の笑った顔を見た気がする。
仕事の時はゲラゲラと楽しげに笑い声を上げているけど、ふたりの時は最近は切ない顔ばかりさせてしまっていた。
「‥結局1日しか離れてなかったな‥」
言いながら矢花の手を握った。
「長かったです。俺には‥この1日」
矢花はポロリと一粒涙を流した。
たまらなくなって抱き寄せると
「離れたくないです‥。嫌われたくなくて物分かりのいい振りしたけど、ホントは別れたくなんかない‥だかさんとずっと一緒にいたいです‥」
言いながら矢花は子供みたいに泣き始めた。
矢花がこんなに泣くのも初めてで‥ずっと無理させてたんだなと胸が痛んだ。
「離れられないよ‥。こんなに好きなのに‥。」
強く抱きしめると
「‥骨折れちゃいそう」
照れ隠しのように矢花は小さく笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぷる(プロフ) - 靴下さん» コメントありがとうございます！励みになります！素敵な感想を書いてくださってとでも嬉しくなりました。拙いお話ですが、またお読みいただけると嬉しいです。 (2022年1月6日 5時) (
レス) @page39 id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
靴下 - 素敵なお話ありがとうございます！特に赤緑の、お互いへの信頼感がつくる2人だけの世界が大好きです！虹色mixの、それぞれの関係性と個性の違いをよく考えられていて6人がもっと好きになりました！更新楽しみにしております！ (2022年1月6日 2時) (レス) @page42 id: 1eafe779d8 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 名無しさん» 名無しさん♡ コメントありがとうございます！ いつも本当に励みになります。かわいいって言ってもらえて嬉しいです。名無しさんも更新楽しみにしてます！ (2021年11月22日 2時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - いつも更新楽しみにしています！主さんの書かれる緑くんがとってもかわいいです❤︎ (2021年11月21日 23時) (レス) id: 0ca7a49390 (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 名無しさん» 名無しさん！いつもコメントくださってありがとうございます（╹◡╹）♡ とっても嬉しいです！名無しさんの更新もいつも楽しみです！ (2021年11月11日 20時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りぷる | 作成日時：2021年11月6日 21時
