（黄）白緑 1（tricolor 2） ページ35
「やっぱり克樹返して」
「‥‥‥‥‥‥はい？」
それはそれは美しい極上の笑みと共に無理難題をふっかけてくる嶺亜くんが言っている事を理解するまでに10秒かかった。
ようやく聞き返した頃にはそれはもう決定事項、というふうに嶺亜くんは俺の反論を許さない顔をしていた。
「‥‥だかさんはモノじゃない」
初めて嶺亜くんに向かってこんな声を出した、と思う位の低い声でやっとの思いで言った。
‥俺は嶺亜くんの事だって大好きだ。
誰より何より信頼してる。
人としても尊敬してるし、メンバーである以前に大事な友達だと思ってる。
‥でも、だかさんの事が関われば話は別だ。
「モノじゃないよ、そりゃ。あいつは意思を持った人間。でも俺の所有物なの。わかるだろ？」
美しい笑みのまま相変わらず滅茶苦茶言う嶺亜くんに
「そんなのわかるわけない‥」
力なく反論したけど、鼻で笑われて取り付く島もなかった。
「‥とにかく、克樹は返してもらうから」
去っていく嶺亜くんの後ろ姿に
「逃げたくせに‥」
面と向かっては到底言えない言葉を吐いた。
聞こえたかどうかわからないけど、嶺亜くんも振り返らないで
「悪いね」
小さく言う声が聞こえてきた。
だかさんの事が好きで、恋焦がれて、どうにも気持ちを持て余していたあの頃、嶺亜くんを捕まえて
「嶺亜くん‥俺だかさんの事好きになってもいいですか？」
って聞いた。
それは許可を得ると言うよりは宣戦布告。
二人の深い絆に入り込めない事も、お互いが自分の感情を封じ込めている事も見ていてわかっていたけど。
「それ俺の許可いる？」
笑って目を逸らした嶺亜くんに
それなら遠慮はしない、と心の中で呟いた。
それからはあの手この手を使ってどうにかだかさんの隣をキープした。
俺だけを見てください。
心の中でそう囁き続けて
親友の役も弟の役も兄の役も自分の物にした。
だかさんが信頼し切った声で俺を呼ぶ度に甘やかして依存させた。
いつしか俺を呼ぶ声に甘さが混じってきたのを聞き逃さなかった。
‥絶対逃したくない。そう思いながら
「だかさんの隣に俺の事置いてもらえませんか」
手を取って懇願するように見つめた。
情に絆されやすくて押しに弱いだかさんが、頷くしかない聞き方で、無理矢理に自分のモノにした。
だかさんが小さく頷いた時に嶺亜くんの顔が頭をよぎったけど、気付かないふりをして。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぷる(プロフ) - ベルマークが100個１００個さん» コメントありがとうございます♡感想言っていただき励みになりました。なかなか更新出来ていませんが、これからもお読みいただけると嬉しいです！ (5月14日 17時) (
レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
ベルマークが100個１００個 - 面白いと思いますこれからも期待してます (5月14日 16時) (レス) @page33 id: 9c8e27407b (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 名無しさん» 名無しさんコメントありがとうございます！嬉しいです！あったかいお言葉いただきやる気が出ました！名無しさんの事も応援してます！ (2021年9月8日 16時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 遅れましたが移行おめでとうございます〜！りぷるさんが描く白さんが大好きです……！これからも応援してます(^^) (2021年9月8日 15時) (レス) id: 8d128bf771 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りぷる | 作成日時：2021年9月4日 11時
