16歩、 ページ21
Aside
あれからなんとなく自分の街を散歩したり、気分転換に1人カフェしながら寛いでいた。
そうして夜の香りが濃くなっていって、街灯の灯りがはっきりと輪郭を浮かべ始めたところで引き返した。
のが1時間前のことだ。
さっきまでは、明後日のあの“計画”のことを唯一伝えていた友達と電話を介して相談を済ませていたところ。
閑話休題。
私はよく、
“余り周りを顧みず、能天気な程に適当に生きている人間だ”
と周りから認識されることが多いが、実際は全くもって違う。
そんな訳ない。
実際のところは失敗しない道を選んで、確実な楽をして怠けてるだけの自堕落な人間なのだから。
私の計画の日は明日だ。
先生には明日早退することを全て伝えてあるから準備は平気だ。
から、きっと周りのことは平気だ。
いつかの様に、想いを馳せながらそっとカーテンを除ける。
隙間から覗いた夜空は重く厚い雲で覆われていた。
_______________________
-翌日-
川西side
2日前に公園を去った後、新汰から電話が来た。
聞かれる内容は分かりきっていた、
それに対して俺が出す答えも。
もちろん、何も出来なかったことや、そのまま引き返してしまったこと。
挙句の果てには絶対にないであろう誤解をしてしまったことも。全部話した。
世話焼きなアイツのことだ、きっと小言とかうるさいだろうな、怒られるだろうななんて思っていた
裏で合わせていてくれたのもアイツらだし。
でも。
アイツは俺の言葉に対して『そうか』とだけ言い、そのままいつの間にか別の話題に移っていた。
あぁ。
アイツはそうだな、そういえば優しいやつだったな
なんて少しだけ救われたような気がした。
昨日から大会が始まってると言うのに、その夜の電話を思い返すと胸がきゅうっとなるのを感じて、俺はAのことで頭がいっぱいいっぱいだった。
考えないようにしなければならないのに、頭から離れることなく俺の思考を縛っていく。
俺はこんなにダメなやつだったのか。情けなくてまたネガティブになりそうだ。
午後練が終わるまでどれぐらいだろう。
そんなことを考えていると
体育館の入口から、一番会いたくて堪らない、酷く懐かしい声がした。
『川西太一君を呼んで貰えますか』
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作者名：水菜 | 作成日時：2022年12月11日 16時
