15歩、 ページ20
-川西side-
……。
いつからだろうか。
いつから、この癖が身についたのだろう。
いや、覚えてないということは、きっと小さなことだったんだ。
ほんのちっぽけな何かから逃げてきただけ。
あぁ。
それなら最初っから逃げるんじゃなかったな…。
ここまで染み付いて取れない“癖”になっていることを改めて実感した。
こんなところでお邪魔になるなんてな
でも今更か。
ハハッと自嘲するかのように嘲笑う。
だって次は、もっとハードな条件のはずだ。それに、次が来るまでは約1週間後と時間はあるが空きすぎる。
逃げ癖がついてる俺なら尚更。
俺は俺が思うよりも、ずっと弱かったみたいだから。
でも、明日の日曜日が終わればまた大会が始まってしまう。幾ら大規模ではないと言えど、気を抜くことが許される筈などないから。
心を入れ替えて、備えなきゃいけないんだ。
A。一年以上呼んでいないその名前は、今でも愛おしくて堪らないほどに価値のある名前。
名前というのは1番短いラブレターだ、という言葉を耳にしたことがあった。
初めて聞いたとき、なんて共感のできる話なのだろうと。
なんて賢い閃きをするのだと、賞賛にも似た感動をした覚えがある。
正にその通りなのだ。
名前という数文字を発するだけで、いくつもの愛が溢れ出すのだから。
もちろん、恋人から恋人に向ける言葉は全て愛が詰まってるものだと信じて疑っていない。
っていうことを白布に言ったら
白『はっ、そりゃよかったな。単純でいいんじゃねぇの笑』
と貶してんのか褒めてんのかよく分からない言葉をくれた。
愛してやまない名前＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『A。』
と呟いてからこの公園を後にした。
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ー翌日ー
Aside
い、いよいよだ…。
私の計画実行まであと僅か。
いくら昨日、十分にお買い物を堪能したからって緊張しないほど馬鹿でも単細胞なやつでもないのだ。
そんなこんなで混乱しまくっていた。
今更？？
…今更です。
手遅れなぐらい、やっと自覚が湧いてきたのだ。
もしかしたら、ずっとずっと、知らないフリをしようとしていたのかもしれない。見ないフリをしてきただけなのかもしれない。
だって
初めてなのだ、自分から蹴りをつけるのは。
自分から、相手の手を引くのは。
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作者名：水菜 | 作成日時：2022年12月11日 16時
