13 ニートとある悶々 ページ14
二人とも黙ってしまった。そりゃあそうだ、さっきまでお互い恥ずかしい様見せてたのだから。
やがて沈黙を破ったのはAだった。
『……あの、あっちにシャワーあるので、どうぞ』
シャワー、というありふれた単語を思い当たるまでに時間がかかり、一松はぼんやり
「あぁ、シャワーね……」と呟いた。
『えぇ、タオルは用意してありますし』
「ありがとう」
案内された浴室に向かいながらも、一松はなんだかまだぼんやりしていた。
■
(やばいでしょ、あれは………)
打ち付ける冷たい水に、ようやく一松は目が覚めた気がした。
(あんなえっろい触り方するなんて思わないじゃん……
そういや噛まれても止める気なかったのに、何やってんのおれ)
鏡に、自分の背中を映す。
(第一、あの子はそういう目的じゃなくてただ食欲を満たしてただけなのに)
細い指がこの背中を撫でた、熱く生きた舌が這った、感触が蘇る。
同時にさっきまで自分がどんな声を出していたかを思い出すと、全身の毛が逆立った。
顔が途端に熱くなる。
(絶対引かれた、絶対気持ち悪いって思われたよおれ。うわああもう嫌だああ!)
叫びたくはなるが、他人の家なのでさすがに我慢できた。
そして一松は決意した。
(よし、シャワー浴びたら次から会うことを断る。
こんなことが何回もあったらおれも我慢できたものじゃないし。
無責任にごめんと謝って、それから、もう会わないと言う)
決意しながらもAの傷付いたような顔を思い浮かべてしまう、彼は気の弱い男なのである。
(……これ彼女を捨てるクズ男のセリフじゃ、)
まぁ種類は違えど実際にクズだし、あの子とはそんな関係じゃないけど。
第一Aがそんな傷付いた顔をするかは分からないのだ、一松はまだ彼女の表情を知らなすぎる。
大きく息を吸って、口の中で言うと決めた言葉を繰り返して……
彼は浴室を出た。
なるべくゆっくりと服を着る。
自分はどうやら彼女に別れを告げるのを渋っているらしい。
妙に他人ごとのように感じた。非日常が起こりすぎたからだろうか?
しかし実際、一松は彼女に対しての自分が抱いているものが何か分からなかったのだ。
フォークという人種への同情か、華奢な体への下心か、はたまた恋慕か。
(分かったとこでどうしようもないでしょ、もう会わないんだから)
彼は心の中、卑屈げに呟いた。
【夢主イラスト描いていただきました】→←12 彼女とある食事
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もふ田もふ猫。(プロフ) - ポチさん» 占ツクのコメ欄は会話禁止なので、これ以上の会話はぜひボードの方にお願いしたいです。上手いこと対応が思いつかず本当にすみません。コメントありがとうございました! (2021年11月16日 17時) (レス) id: 332b76537b (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - おはようございます。そうなんですね!あのう、お願いしたい事があるのですが (2021年11月10日 7時) (レス) id: e281db1a4b (このIDを非表示/違反報告)
もふ田もふ猫。(プロフ) - ポチさん» コメントありがとうございます!おそ松さんが好きなのでこういう作品を書いています! (2021年11月10日 0時) (レス) id: 2107166e13 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - おそ松さんお好きなんですか? (2021年11月10日 0時) (レス) id: e281db1a4b (このIDを非表示/違反報告)
もふ田もふ猫。(プロフ) - 夜弧さん» むっちゃんだ!!読んでくれててありがとね、がんばる!! (2021年9月24日 20時) (レス) id: 2107166e13 (このIDを非表示/違反報告)
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