拾われた話-1 ページ1
「ずっと独りだったのかい?」
燃え盛る火の渦に囲まれてるのに、僕は呆然と彼を見つめていた。
「…うん。」
「そっか。こんな狭い部屋で、独り閉じ込められてるとはね。ラーテルの気が知れないよ。」
彼の両手に持つ2本の剣には大量の血が付いている。
何十人もこの国の人を殺したのだろう。
そんなこと僕にはどうでもいいんだけれど。
「さて。それじゃ、お姫様も手に入ったし。
帰ろっか。」
白髪の彼がゆっくり此方に近づいてくる。
剣は二本とも鞘に仕舞われた。
僕は彼を見つめたまま、指一本動かせないでいる。
「お姫様…?」
「君のことだよ。」
そう言って、地面にへたり込んでいた僕を彼は軽々と抱き上げた。
お姫様と呼ばれる地位にはいなかったはずなんだけど。人違いだろうか。
「僕はお姫様じゃないよ。」
「これからそうなるから大丈夫。」
「…?」
「君は俺のモノになるってことさ。」
僕は彼のモノになる。
成る程、僕の所有権は彼の所に移ったのか。
お姫様って意味は分からないけど、要約すればそういうことだろう。
「何すればいいの?」
「何も。俺の近くに一生居てくれれば、それでいい。」
そう思ったけど、どうやら少し違うらしい。
「何で?それじゃ、僕がいる意味なんて無い。」
「そんなことないよ。君がキミである限り、俺は君が大好きだから。」
僕の存在価値はこの膨大な魔力と強力な魔術にある。他のことは何も出来ないのだ。なのに彼は僕が僕である限り何もしなくていいと言う。
わけがわからなかった。彼の言う、“大好き”と言う言葉の意味も含めて、僕には難しすぎた。
「そんなの僕じゃない。」
「君だよ。」
「魔法を使わない僕なんて僕じゃない。」
「そんなのただの付加価値に過ぎないさ。俺は君が、君だけが欲しいんだよ。」
燃え崩れる建物内を、悠々と彼は歩く。
周りのことなんてどうでもいいと言った風に。
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作者名:リオ | 作成日時:2017年5月19日 22時