【学園アリス】たからもの【男主】 (ページ3)

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『俺、父親になるんだ』

あまり大きな声で言えないからか、そうボソッと呟いて貴方が僕に笑いかける。

「そう、ですか」

『なんだよ、もっと喜びとか、祝いの言葉とかないわけ？』

素っ気なく返せば、貴方はその柔らかな笑顔のまま拗ねたように口を尖らせて僕の肩に腕を回す。

それがどういう行為なのか、貴方は全くわかっていない。

喜び？

祝い？

そんなの感じるわけがない。

貴方は僕の気持ちを知らないから。

貴方が笑顔で報告したことは、僕にとっては非常に残酷な内容で。

いずれ貴方は彼女と共に高等部校長の元へ行きその報告と相談をするのだ。

何らかの方法で彼女は学園を去り、貴方は何もなかったかのように学園生活を送る。

そんな中でも貴方は、子供の名前はどうする、だとか、やはり子供もアリスなのかな、などと楽しそうに尋ねてくるんだ。

そして、卒業を待って貴方は会いにいくんだ。

大切な人に。

貴方の『たからもの』に。

幸せそうな貴方を見ていたくなくて僕は距離をとった。

懐かしい夢。

何かの予兆のように僕の夢に出てきた貴方は、最後にどんな顔をしていたのだろう。

そこだけが、どうしても思い出せなかった。