��-8 Side:切原 ページ29
今、後輩が駆けていった先にいる人を彼は兄と呼んだ。
ということは、だ。
そこにいる彼も『三葉』だということ。
チームメイトに先輩と呼ばれていたから、きっと2年か3年。
年的にも当てはまる。
でも、彼はバスケ部。
競技がかけ離れている。
東京に行ったから、バスケを始めたから会わなくなった？
でも、あんなに強くて、楽しそうにテニスをしてたのに、それはありえない。
「なぁ、今の人って奏斗のお兄さん？」
「え、あ、はい。今は別々に暮らしてますけど」
念の為聞いとく。
「腹違い、とか？」
「何言ってるんですか？列記とした兄ですよ」
『兄』と呼んでも『義兄』の可能性だってある。
でもそれもないようだ。
「名前って、三葉A？」
「ッ！！！なんで知ってるんですか！？あ、でも今は神凪Aですよ。学校、母の旧姓使って通ってるんで。それから、住んでるマンションも母方の祖父名義で借りてるはずです」
これではっきりした。
彼が間違いなく俺の知る『三葉』だ。
三葉A。
同姓同名もあり得るかもしれないが、弟がこうしてテニスをしているのだ。
兄の影響はあるのだろう。
「なんでそこまで？」
奏斗の話を聞いてこぼれた疑問。
それだけじゃない。
聞きたいことは山ほどある。
なんでテニスをやめたのか。
なんで東京にいるのか。
なんでバスケをしているのか。
「後で少しバスケ見よーっと」
彼がどういうバスケをするのか、どのような表情でプレーをするのか、興味がわいた。
「僕も見たいです！」
「いーんじゃねーの」
「こら切原ーーー！！何しとる！！さっさと帰ってこんかー！！！」
そこで副部長の怒声が響き、俺は慌てる後輩とともにテニスコートに戻るのだった。
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作者名：夏生莉緒 | 作成日時：2016年9月21日 20時
