５６話 ページ9
調子を取り戻したのか、あまり戦い慣れてない者からすれば近付きたくないような戦いを繰り広げるスレット。敵をあらかた片付け終え、その様子を遠くから視察していたアンデルセンが声をかける。
しかし彼に応える前に、先に駆け寄ってきたヴィアから飛び蹴りと首絞めをされてしまい、二人のじゃれあいに付き合ってると命がないと判断したアンデルセンは王宮跡へと向かった。先程まで加勢していた海賊たちはそこにおらず、おそらく龍だったものであろう何か......泥に包まれた生物も、ゆっくりとした足取りで王宮跡に訪れている。
........................
その生物は中に入るわけでもなく、すでに動かぬものへ戻ったアンデッド、想像を絶する戦いを繰り広げたのだろうと思わせる赤い玉座の間にて倒れているレイナを見つめるだけだ。
コビーは彼女を汚さないように抱えており、さらに奥の玉座には骸が座っており、その傍らで少女が骸を見つめ続けている。少々異様な光景ではあるものの、これも取材のためだと己に言い聞かせ、アンデルセンはレイナの顔を覗き込む。意識はあるようだが、全身の力が抜けたのか立てないらしく、しかし珍しく会話は許してくれるようだ。
「僕の見立てによれば、二人は神話級とはいかないだろうが、それらしい戦いをしてくれたはずだ。加勢に来た者すら圧倒するほどの。僕にその物語を聞かせてくれないか？」
我ながら欲に素直なものだ、と。アンデルセンは自分に呆れる。戦いを終えた人を労うこともなく、早く自分が聞きたいものを語れと言うのだから。しかしレイナは語るほどのことじゃないと言いながらも、真っ先に向かったコビーさえも知らない物語を語り始めた。
無限にわき出るアンデッドを殺し、殺し尽くし、槍さえも折れた時。外から叫び声が聞こえたという。ふとアーチ形の窓から外に目をやると、暴れ、炎を吐き出す謎の龍に、金で雇ったピエロ海賊が泣きながら龍を叩いていたらしい。そもそも何故龍がいるのかすら分からず、思わず考え込んでしまったが、すぐに思考は取り払われる。龍が突然泥のような形へと変貌し、地上へ真っ逆さまに落ちてくるのが見えた。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
