５４話 ページ7
その姿はまさに鬼神の如く。初めて銃以外の武器を握ったとは思えない力強さ、身のこなしは大地を震わせる。
間に合わせで育てられた子供らには耐えれない衝撃だ。速度と殺しの技術のみを与えられ、回避を学んでなければ、強者を視界に入れる資格すら与えられない。スレットは今この時より、強者のステージへ上がった。
例え武器を破壊されようが、これまでの冒険で実際に目にした武器を生み出す。剣ならば腕も足も動かせないよう筋肉を削ぎ落とし、銃も同様に撃ち抜けばいいだけの話。
最悪、生きてさえいればいい。子供の将来は消えるものと考えた上での冷静な判断、一時とはいえ海兵だったとは思えない思考だ。家族にさえ咎められなければいいという非情な判断でもあるものの、レイナが求めていたのはまさにそういうことなのだろう。一瞬でも迷えば自分が死ぬ。自分の命を最優先に、必ず生きろ。命じられずとも、船長が自分達にどうしてほしいかは考えずとも分かるということだ。
船長の想いを最優先に、"事故"で子供が死ぬことがあったとしても、それらから目を背けよと。
「すぐに銃弾が切れるのがデメリットだな。そういやバギー、龍と話せるか。というか行ってこい。」
「おれが！？死ねって言ってんのか！！！」
「考え事をしている間に気付けばよかったな。ロジャーがいなくなっていたことに。リリーは生きているのに、戦力だけで言えばレイナを越えるあいつが消えるのはありえない話だ。もしもの可能性もある。あいつを微睡みから解放してやってくれ。飛べるだろ？」
「......金を積めば」
「億はくれてやる。」
「話が分かる野郎だなァ！行ってくるぜ！！！」
眼前の敵より、身内に目を向けよ。さすれば道は開かれん。
誰の言葉かも忘れたが、スレットは頭上を飛び続ける龍に目を向ける。まるで四皇カイドウのような姿、しかしどこか遠くを見つめながら、島からは決して離れようとしない生物。
軋む心からも目を背け、再び敵に銃口を向ける。誰の邪魔もさせず、必ず皆で生きて帰るためにと、内に秘めた想いを銃弾に込めて。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
