５２話 ページ5
＿＿＿＿＿＿＿＿＿傍観者になってしまった、俺自身への罰だ。
おぼろげな意識の中、俺は空を飛んでいると、ようやく理解する。空からはすべてが見えた。不死身の軍隊を次々と殺していく妻の姿、襲いかかる子供らを相手する海賊たち。どうして海賊が、クロスギルドとクロネコ海賊団のクロがいるのかは分からないが、今誰も知らぬところで戦況を悪化させまいと戦っているのはよく理解できた。
頭上は何か、大きい生き物が飛んでいる。ずっとそこにいたような気もするし、いつも俺たちの傍にいてくれた気もしなくもない。意識もあやふやで、いつかは地に向かって落ちていくのだろうと思いながら空を飛んでいたとき、誰かが俺を叱るような声が聞こえた。その声に聞き覚えのあった俺は、深く息を吸って、吐いて、自分の中の迷いを整理する。
昔約束を交わした女か、今を共に生きた家族か、どちらを救うべきか。
......一度でも冷静になれば、分かりきっていたことだ。俺は、レイナを救うべきなんだと。迷いが晴れたのか、今なら能力が使えそうな気がする。
「さっさと落ちてきてよ！スレット！！！」
「分かってる。お前の武器をもらうぞ、ヴィア。」
金獅子の能力はもう使えない。だが、それ以上に。今なら無限の武器を生み出し、使えると確信した。確信した通り、俺が生み出すと意識した武器が手元に現れる。
ヴィアのメイスを手に、空高くから地上の敵に向かって武器を振り下ろせば、直撃した敵は身体がバラけ、周囲はその衝撃に耐えきれず遠くまで吹っ飛ばされていく。他者によって生み出された迷いが晴れた途端に、自分でも驚くほど強くなるのかと感心していると、もう少し早くできなかったのかと呆れた声。
「クロ、お前よく新世界に来れたな。」
「拉致られた。」
「......クロスギルドの雑用になったのか。ここしばらく、俺が俺じゃなかったような気がするよ。頭上をずっと飛んでいる龍もよく分からんし......何か困ってることは？」
「ガキが邪魔だ。それからアンデッド。」
「分かった。ガキは気絶、アンデッドは殺すぞ、クロ。足を引っ張ったら新世界の海に沈める。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
