86話/その魂に救いがありますように ページ40
「あっ、目が覚めた。」
「......馬鹿大佐が女に膝を貸すなんて、隕石でも降るのかな。」
「今すぐ独断で死刑執行してもいいんですよ?海賊の船長さん。」
目が覚めて早々騒がしいと思えば、より強くなったコビーの攻撃を涼しい顔で受け止めるレイナの姿。今度は消えてないという安堵と共に、ヴィアが声をかけてくる。
「スレット、私たちの体に宝石が刺さったというか、埋め込まれた......のよね?何故かその砕かれていた宝石が修復されて、私たちの手元にある。もし今のが夢じゃなくて、現実のお話なら......そういうこと、よね?」
「......レイナが持っていた感情ってやつか。ロジャーにくれてやる。あいつが憧れやら嫉妬でおかしくならないなら、それはそれで助かる。復讐もレイナには似合わんだろ。後は俺たちが怒りと哀しみを代わってやれるなら、それでいい。」
声をかけてきたヴィア、痛む頭を抱えながら起き上がる二人から宝石を奪い取り、それらをレイナに投げ渡す。レイナがこちらに微笑みながら、奥からずっとこちらを見張るように立っている泥の怪物に、宝石を差し出した。
生きるのなら人として私の傍に、死ぬのなら人として死んでほしい。これはあなたが何よりも優先しなければならないもの、船長命令。その言葉を理解したのか、怪物は宝石を泥の体へ取り込む。
............
五分間も沈黙が続いた。いつ誰が誰を殺してもおかしくないような状況下で、レイナは泥の怪物を撫で始める。俺たちには分からないような変化があるのだろう。深く言及はしなかったが、察してない者からすれば実に気味の悪い光景だ。アンデルセンにいたっては一人、くつくつと笑っている。悪徳作家を含めた全員が「意味のない行為だった」と思い始めた頃だ。泥の怪物の体に、目に見える変化が起き始める。
ゴポゴポと常に湧き出ていた泥が湧かなくなり、体だったものが崩れてきた。
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作者名:御法川 | 作成日時:2024年3月14日 20時