84話 ページ38
「抵抗もしないか。哀れだな。」
「......」
俺/テメェの夢は、なんだ?
下等種族らしく、同族の真似事をしているだけの男だとしても、夢の一つぐらいはあるだろう。
ようやく18を迎えた頃の記憶が、頭を過る。今の今まで忘れていたそれに、いったいなんの価値があるというのだろうと、俺は思う。実際に価値なんてない。そこにヒントもクソもないし、探るにしてもカウントは再開する。ヴィアの泣きそうな面を見てなんだが、俺は諦めることにした。
■■■■、諦■■■?
■■彼女■助■■■■■■■■■?
そう、諦めた。諦めたはずだ。レイナとAを理解できずに、この庭園の花のように朽ちていく運命を選んだはずだ。
それなのにどうしてだろうか。俺の体は勝手に動き、Aを押し倒して首を絞めていた。落とした斧を拾わないように、もう何処にも行かないように、俺は泣きながら愛しい人の息を止めようとしている。やめろと叫び、強大な力を持っていたはずの体は足をジタバタとさせるだけ。一度は諦めを選択した俺に、"勝利"の二文字が思い浮かぶ。
今なら殺せる。その確信と共に、より手に力を込めた。だがその力は一瞬で弱まる。
「おね、がっ......す......れ......」
「ッ、あ」
お願い、やめて、スレット、と。確かに好きな人の声で、愛している人の声で、そう言われた。弱まった隙を狙って、Aの拳が俺を殴り飛ばす。
言われずとも分かる。カウント、2。俺の命がじきに尽きると同時に、Aも頭に呼吸が回らないのか、ふらふらとした足取りで斧を掴み、再びこちらに狙いを定めた。
「ああ......抵抗するなら、惨たらしく殺してやる。第五の番人を食らった甲斐があった。嫉妬と復讐、この力がある限り、私は勝てる。成し遂げられる。本物に代わって、すべてを殺し尽くすことができる。......ロジャーを救う?そんな不確定情報に惑わされるレイナなど知ったことか。肉体の自我さえも殺し、皆を一人残らず消してやる。」
「......俺だけハードすぎるだろ。だがAがその気なら、ここで殺して止めてやるよ。今のお前を見ていると、昔以上に殺したくて堪らない。」
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作者名:御法川 | 作成日時:2024年3月14日 20時