８１話 ページ35
「(俺、このまま死ぬのか？レイナが消えるかもしれない、その本人に殺されかけている、でも助けになりたい、でも、許されてないから、俺は)」
昔の記憶は唐突に。彼を苦しめるように、同じ光景が何度も繰り返し映る。夢を、その先を見ていた少女が夢を諦めるまで、もしかすると諦めてもなお、スレットはAの敵であり続けたのだろう。
彼/俺が悪いのに、悪夢として記憶は彼を苦しめようとする。体が思うように動かなくなったスレットを、クロコダイルがサボのもとへ投げ飛ばし、投擲された斧を受け止めたヴィアが、代わって前線へと飛び出る。だが攻撃は何も通じず、当たったと思われる攻撃すらも、Aは素手で受け止めてしまう。刃を受け止める時ですら痛い、なんて感情を顔には出さず、目前にいるはずのヴィアの後ろにいるスレットだけに狙いを定める。
時間が経過することで、徐々に首と胴体がくっついていくスレット。しかし元に戻っても悪夢に苛まれているのか、目の焦点が合わないようだった。
「嫌だ、おれっ、そんな、つもりは」
「......本物のAは、私以上に辛かったろう。大人になれば、その実力を発揮できたなら、偽りだったとしても母親に愛される未来が待っていた。その未来を奪ったのは、この子の家族を名乗る三人の罪人だ。ここでお前たち四人を殺し、現実世界でランを、子供を殺し、復讐を果たそう。」
「......子供も？」
ある単語で、震えは途端に止まる。スレットは戦わなくては、恐れるな、いつも通り、昔を思い出せと自分に言い聞かせ始めるが、余計に正気を失いかけているのだろう。強く腕を握った箇所からは、爪が食い込みすぎて血が流れていく。
虚になっていく瞳は、再度Aを捉えた。変わらず殺意を向ける家族の姿、しかしその内には別の何かがあるのが見えた。その感情は、レイナの中で形成されたAという人格は、殺意以外に何を想ってここにいるのか。それを考えたとき、何かの破片がスレットの頬を掠める。
「カウント開始、4。」
「掠めるだけで......サボ、しばらく俺を庇え。Aの感情が分かれば、勝機が見出だせるかもしれない。」
「......生きて帰ってから、その生意気さを叩き直すことにするよ。レイナさんからも、スレットが生意気で困り果ててるって愚痴られるぐらいだからな。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
