77話 ページ31
繰り返す都度に、五度。試練の鐘が鳴り響く時、彼らに最後の光景が映し出される。
それは、火災以外の何かが原因で崩落したのであろう街の光景だった。先程と確かに同じ街並みのはずだが、本人の悪夢と現実で起きたことはリンクしていないらしい。この街はそもそもの話、別の要因で滅んだことが分かるだろう。
騎士の格好ではなかった彼らは、人の声がする建物へと踏み入れた。
「この女、叩いても起きやしねェ!今のうちに持っていこうぜ!」
「どっかで見たことがあるんだよなぁ......?だが船長好みの女だ。持っていく前に遊んでいくか?」
「いいなぁ、それ!」
破られた服の残骸に、もう息もしていないレイナ。その肌に傷を作り、あまつさえ尊厳も奪おうとする、海賊らしいといえば海賊らしい非道な輩たち。その肌に手を伸ばそうとしたとき、息をしていなかったはずのレイナはニタリと笑い、その腕を血の刃で切り落とした。
男が悲鳴をあげ、煩わしいと感じたレイナはその首も落とす。船長に助けを求めようとする男も心臓を貫かれ、絶命。ゆらゆらと立ち上がるレイナは、彼らがたどったであろう道を辿り、その先で二人の帰還を待っていた海賊を皆殺しにした。血に濡れた彼女の表情はどこか昔のようで......Aの人格が再び目覚めたのかと思ったが、どうやら彼女は正気らしい。
「これで船を手に入れた。......次は?ロジャーを救う唯一の方法は、信用していいか分からないものだ。この宝石を投げれば、後はどうにでもなるのか?............全員が満足できる結末か。」
その証拠に、記憶の中のレイナは人らしく悩んでいる。
何も察していないスレットだけが、彼女の異質さを感じ取ってしまった。感じ取るしかなかった。ここで彼女の真意を察することができなかったら、もう話すことさえ許されない気がした。声を出しても届かないのだろうが、スレットはレイナ、と大声で叫ぶ。
偶像には何を叫んでも聞こえやしない。しかし、偶像であるはずのそれは、確かにスレットを視界に捉えた。
「君が嫉妬の私を殺してくれたら、後は復讐の私が死ぬだけだ。五つの心はロジャーに宿り、ロジャーは救われる......らしいね。その後は、私の体が脱け殻になる可能性を辿るのなら。君に一つ、頼み事がある。」
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作者名:御法川 | 作成日時:2024年3月14日 20時