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５１話 ページ4
赤子が泣き始め、海兵らが赤子をあやす。その様子を見て、アンデルセンは再び執筆を始めていた。
もう目覚めることはないだろうと言われたヴィア。せめて彼女に、安らかな死を送るために。彼女の仲間からそのような許可はもらってはないが、これはアンデルセンなりの気遣いでもあった。簡単な執筆を終え、後はそれを声に出して読めばいいだけ。さすれば、本の内容は現実のものとなる。
だが、それを読もうとしたときだ。赤子が突然笑い始め、その女性の手をか弱い力で握っていたのだ。頬を叩いたり、女性から離れようとしなかったり。どうして今さら彼女に執着しているのかと疑問に思う者も多い。
同時に、彼女の瞼が、少しだけ動いたのが見えた。
「......ヴィア？」
聞かせてもらえないと思った物語が、再び動こうとしている。ヴィアはゆっくりと瞼を開き、赤子に待っていてねと声をかけ、誰かに止められる前にと扉を蹴り破って外に飛び出した。
目覚めて一瞬ですべてを理解したのか、それとも声だけはずっと聞こえていたのだろうか。どちらにせよ、この物語はもう不要だと、アンデルセンは紙を破り捨てた。今の彼らの背中を押してくれる、唯一の人物が目覚めた安心感と共に、アンデルセンは先程までヴィアが眠っていたベッドに腰を掛ける。
呆然としていた海兵に珈琲と砂糖を持ってくるよう声をかけ、まだ名もない子供をそっと抱き上げた。子供は笑っている。
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
