王と神と作家、王の覚醒の刻【ONE PIECE】 (ページ30)

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７６話ページ30

眼前の敵に武器を向け、試練の番人はヴィアのみを視界に捉えた。試練は回を重ねるごとに殺意という牙を剥き出しにする。だがすでに自分を見つけていたヴィアは怨念をものともせず、メイスで番人を叩き潰してみせた。
何度も、何度も、何度も、何度も。番人が何度も苦痛の悲鳴をあげ、再生を試みる度に。何度も何度も......しかし番人は一向に死なず、腹から産まれ落ちる肉塊は、その巨体を引きずりながら他三人に変わらず殺意を向ける。番人はその虚ろな目でヴィアを睨み、ヴィアは思わず怯んでしまった。

「ダメです。あなたでは足りない。あなたの憧れは過ちだった。あなたの憧れは私の憧れを殺した。私の憧れは無自覚にも復讐心を募らせ、あなたを殺しに来た。今のあなたは、まだ足りない。」
「......でも。初恋の人を否定するなんて、私には」
「自覚をしているのなら変われる。例え家族だろうと、初めて恋をした人だろうと、時には否定しなくてはならない。例え自分が死ぬことになろうとも。」

その目は確かにヴィアのすべきことを見抜いている。番人を殺せない理由、憧れを以て憧れを殺す/否定するのなら、彼女もまた憧れを殺す/否定するのみ。でなければ、他者の憧れすら踏み潰すこと叶わず。
震え始める手、ただこちらを静かに睨む番人、徐々に三人の息が荒くなっていく。間違いを正す、ただそれだけの簡単なことができないヴィアは武器を手放しそうになるが、それだけはいけないと、もう一度強く握り締めた。

「家族を任せられるのは、君しかいないから。」

ああ、そうだ。この人のように、背中を押す者が否定もできなくてどうする。その決意を強く秘めたヴィアは、メイスをもう一度振り上げて＿＿＿＿＿＿＿＿

「合格。またね、ヴィア。」
「......うん。来世があっても、殺すのは私なんだからね。レイナ。」

彼女の意思を悟ったヴィアは、脳を撃ち抜かれると同時に彼女の肉体を、今度こそ叩き潰してみせた。