７４話 ページ28
立ちはだかる巨体の赤子は、前が見えないのか気配だけで殺そうとしてくる。その皮膚は固く、柔らかく、物理攻撃はミリも通じない。スレットも思わず、TRPGならキャラロス確定だなと泣き言を言ってしまうほどだ。しかしサボとクロコダイルの炎、砂の攻撃は通ずるらしく、おそらく属性攻撃に分けられるものが唯一の手段なのだろうと推測する。
そう来るのなら。四人は一斉に炎の中へと飛び込み、赤子もそれを追いかけるように四足歩行で炎の道を走り出す。だが彼らの想像通り、属性攻撃に弱い赤子は次々と燃えていき、燃えない赤子だけが気配を辿って永遠と追いかけてくる。最初はママと呼んできたそれが、段々聞き取れなくなるほどの異音に変わっていき、ヴィアの精神は徐々に蝕まれている。
しかし。それでも。彼女は船長の言葉を信じた。こちらを危険に巻き込んだとしても、絶対に生還すると断言できるほど信頼してくれる、船長の言葉を。とことん巻き込まれてやると決めた以上は、ここで挫いてる暇もないと己を鼓舞する。だがその決意を捻り潰してしまうように、赤子は際限なく、ある方角から現れる。
「(......どうしてか、姿も見えなかったレイナの赤ちゃん。たぶんこいつらだ。もしヴィアの考えが正しいなら、レイナのいた場所が自分の恐怖を写し出す世界なら......家族が、怖いの？)」
ふとヴィアがレイナの恐れるものを考えたとき、今までのレイナの笑顔に霧がかかるようになった。昔こそはよかっただろうが、レイナが妊娠したきっかけはスレットのストレスと昔の怒りだ。例え被害者が許したとしても、結局加害者はどこまでいっても加害者。
スレットの■■は止まらない。殺したくなっただろう。好きでもない男にここまでされれば、ようやくこの女も許しを乞うほどに堕ちてくれる。その末に産まれたのが、息子。
ああ、それは確かに。恐怖も募ることだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
