６８話 ページ22
第一の試練は、怒りと言い訳をするだけの迷いを晴らすための試練。少女はずっと、あの日の自分に道を示す何かを欲していた。未来で報われたとしても、過去が報われないなら意味がないという認識してしまったがゆえに。
どうか強く生きて、あなたが愛した人の意志を継いで、継げなかったとしても彼女の願いを忘れないであげて、あなたは生きるんだ。その答えに納得した怒りのルビーは消えた。
哀のサファイア。それは戦いでしか救われぬ存在。主が望むままに、救いたかった魂を救うために。もし叶うのならば、これからの未来を生きていくために不要な人間性の一部を捨てるために。大丈夫。
もし私がそれを失っても、あなたが代わりに怒り、哀しみ、憧れて、嫉妬して、ちょっとした悪戯で軽い復讐をしてくれるから。
それに理解を示したのは、皮肉にも砂漠の旧支配者のみ。
心優しい者なら言うだろう。それを失ったあなたから、代わりにそうしてくれる者が消えれば、あなたは怒ることも哀しむこともできないと。反して旧支配者は、余計なものが消えればより効率的に動けると感じたらしく。しかし賛同はしなかった。どれが正解か、どこで間違えたか、それも分からなくなれば目的の達成すら難しくなるだろうから。
二人はやはり、どうあっても交われぬ運命のようだ。静寂を断ち切るように、クロコダイルが彼女の首に目掛けて斧を投擲する。しかし投擲能力の低い彼が投げたものは、思うように飛んではくれず、しかも彼女はそれを易々と受け止めてみせた。
「笑止。身の丈に合わないことはすべきではありません。抗えぬのならここで死になさい。」
非情な言葉を浴びせる彼女を、今度は炎が包む。
ああそうか。試練を越えた者、主より別たれた同志に答えを与えた者は、己が力を再現することができたか。先程歩いた道を振り返れば、際限なく炎を浴びせ続ける、参謀の姿があった。しかし、だがしかし。汝の炎はこの身を燃やすに足らず。この身を殺せるのは、砂漠の旧支配者ただ一人のみと。
「だが、炎で周りもろくに見えないだろ？レイナ。」
「......そういうことですか。いいえ、いいえ。あなたたちがどれだけ思考しようが、同じことです。あなたたちが知る弱点とやらは、別たれたものに通じません。私を殺すのなら、あなたがあなたと言わしめるものを掴むのです。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
