５０話 ページ3
では、と通信を切り、痩せ細り骨まで露出しているのではないかと思わせるような風貌の女は、一人玉座で体を休めている。その眼前には、女に跪く子供らが数十と数を揃えていた。
女は震える手で外を指差し、意思を確認した子供らは各々の武器を持って王宮跡を飛び出す。黒き月に照らされる女の姿は歪であり、一人の少女が虚な眼差しで見つめているだけ。そこにコツ、コツ、とこちらに歩みを進める音が響いてくる。黒き影を身に纏って。音の主も震えるような声で、僅かながらも息を繰り返していた。最小限、他のことは別の事柄に集中させるように。
しばらくして、音の主は姿を見せた。少女の指先もピクリと動く。玉座の女は、それを信じて待っていたのか安堵の様子を見せた。
「カンヌ。あなたを殺すのは私しかいない。何度しぶとく蘇ろうが、生まれ変わろうが、私が死のうが関係ないよ。あなたは生きている限り人に害を成す存在だから、私が殺すの。あなたの魂が擦りきれて消えてもね。」
「......そうだな。待っていたよ、レイナ。もし私の勝ちで終わるなら、お前も家族にしていいか？」
「何故？」
「Aが、寂しがる。」
レイナと呼ばれた女は、何を今さらと笑う。人は本来の目的を見失うことが多いと言うが、カンヌはその典型だ。当初の目的など忘れて、人を殺すことが楽しくなってしまったらしい。少女はその罪を見抜いている。
今より行われるのは、カンヌが満足するためのものだ。カンヌが満足するまで、黒き月に照らされるこの地で産まれるアンデッドを殺し続ける。レイナは覚悟を決めたように、ランより受け取った結晶に口付けした。その手に携える錆びた槍を、強く握る。
「罪人同士、巡り会ったなら殺し合い。邪魔は入らないようにした。安心して死んでくれていい。」
「......楽しみにしている。昔の夢も忘れた、もう疲れたからな。死ぬ日を心待ちにしているよ。」
王宮跡より、鉄と鉄が交わるような音が聞こえ、一方的な殺戮が見えた。
それに背を向け、ある海賊たちは刃を向ける敵に目を向ける。これより誰が死のうが、それらすべてから目を逸らすために。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
