５９話 ページ12
その島はリゾート計画が潰れたことで、人の手も入らなくなった寂しい場所だ。時折誰かが出入りしているのが見えたが、それを追うように泥の怪物が現れるため、確認しようにも近付けないというのが現状だった。
戦えない者は不安だっただろう。一切の武器を捨て、魂に祈りを捧げんがために訪れよ。文章に従えば、この怪物が襲ってきたときの対抗手段はない。武装色を持たぬ者は、より死亡確率が上がる。そんな心配をよそに、怪物は彼らが片手に持つ招待状を確認し、島の奥へと消え去ってしまった。ひとまずは助かったのだろうと判断した招待客は、泥の怪物と同じ道で島の奥へと進んでいく。
「......お気に、なさらず。」
「ん？コビー、今喋ったよな。こいつ喋ったよな。僕の記憶がパーフェクトであれば、僕は彼の自我と思考をもらったから自動で言葉も失ってるはずだけど。あれ、おかしいな。」
「うるさいです。ヴィアさん、今なら彼を縛り首にしても見逃しますよ。」
「うん......黙っとく。」
たぶん自分達は、この怪物に案内されている。招待主も想像通りの人物なのだろう。しかし招待客までは想像しているわけもなく、明かりが灯された崩落した街に出れば、そこにいたのはローブの男とクロスギルドの面々、そして今回も強制で連れてこられたのであろうクロの姿。
他にも四皇の幹部クラスの者、歌姫など、立場が違う者同士が集っている。こんなに招待して何のつもりだろうか。ここで殺し合いをするつもりかと思ったものの、危惧していた者は予想以上に利益になりそうなものをもらった以上暴れることはないと話している。しかし黙って見逃すわけにもいかない海軍は警戒を続けるが、ヴィアの驚いたような声に皆が振り向く。
「Aが泣いてる......うそぉ！？ヴィア、この子が泣くところなんて初めて見たよ！？昔だって生意気にも笑いながら反抗してきたのに......」
「本当に復讐心が募ってたのかなってぐらい、反抗していますね......？ともかく、彼女が反応を示しているということは何かあるに違いない。ここにいるであろうレイナさんから、どうして海賊も招待したのか。招待した意味も聞き出しましょう。海賊を捕縛するのはそれからです。」
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作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
