５８話 ページ11
「ロジャーに何をした、アンデルセン。」
「僕は彼の望みを叶えてあげたんだ。黄泉の国に行けば、また一人だ。船長の傍にいたい。その願いを叶えるため、僕が思う怪物へと変化させた。その魂を捧げ、自我と思考を一切捨てると誓うのであれば、君に相応しい物語を書き上げようって。そして、ロジャーは愛しい人が朽ちても生き続ける不老の怪物となった。」
淡々と話す僕を殺す気だったのだろうが、今の彼女が僕を殺せないのは分かっていた。内臓も出血しているのだろう。今にも死にそうな顔で、最低限の治療だけをしている。レイナの能力を一つに戻すのはまた今度ということで話を終わらせ、次に少女の元へ向かった。
見たところ、そこに魂はあるようだが気力が感じられず。骨をいじっていたリリーは、それはカンヌが自分の生命力を最大限捧げて蘇らせた、喋りもしない玩具だと言う。リリーの言う通り、彼女は手を握られても反応すらしないし、カンヌに対して何かを想うような反応しか示さない。今この瞬間、自分の手中に欲しいものがあるようでいい気分にはなったが、僕が欲しいのはこんな無気力な主人公ではない。
結局、この旅で得たのは人の挫折と、意外と早い立ち直りぐらいなものだろうか。人形は現在、彼らが自分達のマイホームに持ち帰ってしまったようだし、上記の通りロジャーは島から姿を消し、レイナも息子を置いて病室から消えてしまった。僕が欲しい物語はここにないと判断し、あれからしばらくは自分の家でゆっくりしている。
「......ベガパンクの映像？世界に何かを伝えようとしているのか。君も逝ってしまうんだね。僕の良き友人よ。」
しばらくしたある日、僕はベガパンクの映像を眺めていたが、それとは別に海軍から連絡が来る。もう僕のいる島に着いたから、外に顔を出してほしいと。
読んでいた本を閉じて外に出ると、そこには気持ちが晴れたようなコビーが立っていた。いったい何の用だろうか？激甘シロップに半年間浸した煎餅を取り上げられ、この前の島に向かいましょうと言われる。祭りに招待した誰かさんとお話したいでしょうと言われ、作家魂というより記者魂に近い何かが疼いた僕は、すぐに支度を始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：御法川 | 作成日時：2024年3月14日 20時
