私に彼氏ができない理由【Ryuto.S】 (ページ36)

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聞きたくなかった、何も知りたくなかった

猪「作ちゃん、」

執拗に2年の廊下を通る3年に気付かない訳がなかった

いつもより人が多い廊下、人を掻き分けるようにしてロッカーへと次の授業の教科書を取りに行った

その時だった、知りたくもなかった言葉が耳に飛び込んできたのは

『あの子でしょ？優斗くんの彼女』

『真城A、って言うらしいよ』

『うわー、あんたのサーチ能力さすがだわ』

『優斗くん今まで彼女いたことないし部活一筋の人だと思ってたんだけどな、』

『まさか後輩に手出してるとは思ってなかった』

周りは騒がしいはずなのに、

何故かその人たちの会話だけ一字一句はっきり聞こえてくる

嘘だ、嘘だ、嘘だ。

サーッと血の気が全身から引いていく感じがする

Aが先輩と付き合った？そんなわけない、だってAが先輩と知り合ってから数日しか経っていないわけで、

『優斗くん付き合ってること否定しなかったって』

まるで鈍器で頭を殴られたかのような感覚だった

少なからずともAは俺のことを好きなんじゃないかって、俺のこと少しは男として見てくれてるんじゃないかって、そんな仄かに抱いていた淡い期待も一瞬にして砕けていく

そこからは"無"だった

話を聞きつけたのだろう、ガリさんが終始心配そうに俺の方を見つめてくる

授業の内容は一つも頭に入ってこなくて、気づけば放課後になっていた

今日は部活はオフ、いつもならAに一緒に帰ろ、って教室まで迎えに行くけど

作「...ガリさん、バイバイ」

猪「...なんかあったら話聞くから」

作「ん、ありがとう」

何も詳しいことは聞かないでそっとしておいてくれるのはガリさんなりの気遣いだろう

今日は一人で真っ直ぐ家に帰る事にした