美しき恋情３ 【赤司征十郎】

番外編＊04　赤司side ページ44

「そもそもにしてAもAだ！
　毎日毎日文句言わずに美味しいごはん用意してくれて
　温かい風呂を準備してくれてベッドを綺麗に整えてくれて！
　少し寂しそうな顔で行ってらっしゃいとか、満面の笑みでおかえりなさいとか……。
　俺がどれだけ癒されたり葛藤したりしていると思って……」

「はいはい。とりあえずお前がAを大好きなのはわかった」

「相当酔っ払ったな赤司も」

「珍しいですよね。
　……5回くらい今の話してますね」


酔っているのか。いないのか。
いつもより頭が働かないし、いつも以上に言葉を発していることから
恐らく酔っているのだろう俺自身は日本酒の注がれた杯片手にAのことを思い出していた。


「夕方5時以降は外に出るな……」

「小学生ですか」

「いいか俺以外の人間についていくんじゃない……」

「幼稚園生か」

「笑顔がとびきり可愛い……」

「コイツ置いて帰ろうぜ」


クイっと杯を煽り、空になったそれにもう一度酒を注ぐ。
酔っていることはさすがに自覚した。



「お前たちにもこの幸福をわけてやりたい……。
　だが相手はA以外で頼むぞ。彼女は……」


かのじょ、は。


「……赤司くん？」


彼女が、なんらかの大きな秘密を抱えていることはなんとなく想像がつく。
家に帰れないのも、どこか不思議な言動が多いのもその所為だろう。



「……Aは、俺が手にしていい女の子じゃないんだ」

「は？」

「どうしたんですか、赤司くん」

「もうその辺にしておけ、赤司」



いつか儚く消えてしまいそうな。
俺の前から突然に姿を消してしまいそうな彼女の、
その輝いていながらどこか儚い笑顔を思い浮かべて、杯を傾けた。

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