元気におはよう 2 ページ2
「父さま！ ホルス！」
リーレッタの呼びかけに振り返る父スティーブンと、近所に住むジャルドーレ通りの点灯夫、ホルシアート・ドリス。家族に良くしてくれる物腰柔らかな男性だ。
まだ舌っ足らずなリーレッタは、彼の呼び名に、略称である「ホルス」を好んで使っていた。
二人の元へ駆け寄り、元気に朝の挨拶を交わす。
「おはよう！ 父さま、ホルス！」
「おはよう、レティ。今日も早起きだね」
「おはようございます。レティ嬢。」
スティーブンは口元を綻ばせ、リーレッタの頭をぽんぽんと撫でながら。
ホルシアートは、その垂れ目がちな菫色の瞳を細め、優しく破顔しながら。
彼のさらさらした銀糸の髪から除く瞳は、アメジストのような美しさを湛えている。
「ホルスはもうお仕事終わったの？」
「ええ、今朝の分は終わりましたよ。スティーブンさんとは途中でお会いしまして」
ホルシアートは、いつでも丁寧な言葉を遣っていた。
年下であるスティーブンやテレシアに対しても、子供であるリーレッタに対しても。
親しくなってすぐのころは不思議に思っていたものの、今ではそれも、ホルシアートの温和な人柄の表れなのだろうと幼いながらに解釈している。
「ねえホルス、よかったらいっしょに朝ごはん食べましょう！」
「この間も朝食を頂いたばかりですから……」
「この間っていっても、一週間も前だわ。えんりょなんかしなくていいのに」
リーレッタは、恐縮するホルシアートを前に、日数を指折り数えながら言い放つ。
一般的な考え方ならば一週間は十分に「この間」の範疇にあるが、何せリーレッタはまだ六歳。一般常識を理解しているはずもない。
「今日は母さまがクランペットを焼いてくれてるの。生地作りはわたしも手伝ったのよ！」
「レティが昨日頑張ってくれたおかげで、材料は売るほどありますから。一人分増えるくらい、何の問題もありませんよ」
満面の笑みを浮かべるリーレッタと、自然に筋肉が緩むように微笑むスティーブン。
やはり親と子。纏う雰囲気はよく似ている。
「……それじゃあ、お言葉に甘えて＿＿」
「やったあ！ あのね、話したいこといっぱいあるのよ！」
ホルシアートが言い終える前に、リーレッタは喜びを隠そうともせず燥いだ。
右手でスティーブンの左手を、左手でホルシアートの右手を繋ぎ、「早く行きましょう！」と急かす。
＿＿きっと今日も素敵な日になる。
今のリーレッタの心境を表すには、母の口癖が打ってつけだった。
続く
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中千歳燐也(プロフ) - 癒純さん» コメントありがとうございます！お褒めいただけて嬉しい限りです……。更新頑張りますね！ (2018年2月3日 9時) (
レス) id: 74f6ee9386 (このIDを非表示/違反報告)
癒純(プロフ) - とても面白いですね！ 描写の仕方が素敵でお上手で、情景が目に浮かぶようです！ 更新応援してます！！ (2018年2月3日 0時) (レス) id: da9e5193a1 (このIDを非表示/違反報告)
中千歳燐也(プロフ) - ありがとうございます！更新遅くなってしまうかもですが、ゆりさんのキャラクターも出させていただきますね！ (2018年1月25日 16時) (レス) id: 74f6ee9386 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 自分のキャラクターも大丈夫ですよ！ (2018年1月25日 12時) (レス) id: 5d18b714a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：火枕燐也 | 作成日時：2018年1月5日 17時
