木槿のふたり２ (ページ8)

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トナカイの登場ページ8

「あと15分くらい煮込めば良い感じかな」

お鍋の出汁を味見していたところで、ピンポーン、とベルがなった。

「はい」
「あ、松本です」
「今開けますね」

ガチャ、とドアを開けると、「め、メリークリスマス」ってトナカイの帽子を被った松本さんが立っていた。

「へ…？」
「ほら〜、絶対そんな反応されると思ったんだよ！やっぱやらなきゃ良かった……！」
「あの…」
「これ、俺が買ったんじゃないから！なんか相葉さんが、付けたほうがクリスマスっぽいとかなんとか言うから…ッ！」

ったく、なんてトナカイの帽子を脱ぎながら頭をわしわしかいてる松本さんが、ちょっと面白い。

「ふふ、似合ってますよ」
「うるさい」
こっちのがいいな、なんてそのトナカイの帽子を私に被せてきて。

「…って、ちょっと！」
「あは、お似合いなのに」
そう言って帽子を取ると、まじまじと私の顔を覗いてきた。近い近い。そして顔圧すごい。

「まーでも、よかった。笑ってくれて」
「え？」

「…お！もう完成してんじゃん！」
美味そー、ってお鍋を覗き込んで笑う松本さん。

もしかして、私を元気付けようとトナカイの帽子を被ってきてくれたのかな。
もしかして、このご飯も、そのために食べたいって言ってくれたのかも。

そんな、自惚れにも似た微かな疑念を抱えたまま、コートを脱ぐ松本さんの背中を眺めていた。