木槿のふたり２ (ページ5)

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家族への裏切りページ5

「ただいまー、」
一人暮らしなんだからもちろん返事なんてないんだけど、なんとなく実家暮らしの時の癖が抜けない。

「よいしょ、っと……」

酒屋に行ったあと、本屋さんに寄り道して欲しかった江國香織さんの全集を買って、そしたらお花屋さんを発見して、ちょっと家に飾る用の花を何本か買ったりした。

そんなこんなで、スーパーの荷物も合わせたらもう腕に跡がつくくらいの大荷物。

「流石に色々買いすぎたな……」

冷蔵庫に食材をしまっていたら、prrr...prrr...と電話の着信。

「松本さんかな…？」

携帯の画面をみると、そこには「着信:お母さん」の文字。

「もしもし？」
「A？お母さんだけど」
「…… 」
「今日お仕事は？休み？」
「休みだよ、ようやく昨日落ち着いて…」

そのとき、お母さんの電話の先で「Aちゃん…？」っていう聞き慣れた声がした。

「おばさん達…来てるの？」
「うん、だってほら…今日クリスマスだし」
「そうだね……」

私と圭太の家族は、毎年クリスマスを一緒に過ごしていた。
私がアメリカに行ってからも、私の両親が寂しくないようにって圭太は毎年このクリスマスパーティーを続けてくれていて。

「……A、今年も帰ってこないの？」
「…………ごめん。おばさん達は？元気？」
「うん、元気よ、かわる？」
「ううん、大丈夫」

通話が終了したままの携帯を握りしめて、「ごめんなさい……」と言うのが精一杯だった。