木槿のふたり２ (ページ12)

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温もりと罪悪感ページ12

松本さんの大きくて綺麗な目が、私を捕らえたまま離さないから。

どくんどくん、と心臓の動きが激しくなる。

「もー、冗談やめ……」
　

ああ。なんでこんな事に。
なんで私は今、松本さんの腕の中にいるんだろう。

おでこに松本さんのセーターが当たっている。
松本さんの心臓も、どくんどくんって動いてる。
人の温もりってこんなに温かかったっけ。

「A…」

名前を呼ばれて、ハッとした。
あわてて離れたら、後ろのテーブルにぶつかってガタン、と大きな音がした。

「ごめっ…」
「……」

この気持ちを、どう表せばいいのか分からなくて。

幸福感。罪悪感。嬉しさ。悲しさ。
ぬくもり。冷え切った感覚。

もう色んな感情でごちゃごちゃで。
私は何も言うことができなくて。

「俺、帰るね………ほんと、ごめん」

ぱたん、とドアが閉まる音がした。