木槿のふたり (ページ23)

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おひとり様の理由ページ23

「でさ～、もう泣いてる姿とかも全部愛おしいわけよ」
松本さんと3人、個室で飲んでたんだけど、先輩は酔いも回って愛娘・さっちゃんLOVE！を連呼していて。

「先輩、いつか彼氏とか連れてきたらどうするんですか？」
「彼氏…？」
「そりゃ彼氏のひとりやふたり、出来るだろ」
ふふん、と松本さんが笑いながらハイボールを飲む。

「…んなもんなぁッ！相手が潤だったとしても俺は認めないね！！」
さっちゃん…パパと結婚したいって言ってくれるかな…って、本気で心配している先輩が可愛くて、ついつい松本さんとイジワルしちゃった。
先輩、ごめんなさい。笑

でも、そんな先輩の姿をみて、菜々はこんなに愛情たっぷりな旦那さんに出会えてよかったな……なんてしみじみ。

「ところでさぁ！」
松本さんがお手洗いに行き、ちょうど先輩とふたりになったところで、こっちをジーっと見てきた。なんか嫌な予感…！

「Aは今、恋愛とかどうなのよ」
さっきまでの酔っ払いモードじゃない先輩。

「何もないですよ、おひとり様です」
「あれからずっといないの？」
「まあ…」
「そっか。まぁ、無理することはないよ」
「そうですかね」
なんだか空気がしんみりしてしまったので、慌てて「良い出会いがありますよーに！」と笑った。

「なになに～、なんの話？」
ちょうどお手洗いから帰ってきた松本さんが、ヨイショ、と私の隣に座る。

「ん？俺の可愛い可愛いさっちゃんに、いい出会いがありますようにって話よ」
なんて言おうか迷っていたら、先輩が自然にフォローしてくれた。

別に隠したいほどの事でもないんだけど、なんだかまだ自分の口からはなんて説明したらいいのか分からなくって。

もう３年も前か…。

久しぶりに、当時のことを思い出していた。