夢を元にした日本人がホグワーツで愉快に過ごす話～賢者の石篇～ (ページ15)

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ハロウィン-1 ページ15

10月31日。ハロウィンである。
大広間の天井には、ふわふわとカボチャのランタンが漂っている。夜になればその中にキャンドルを灯し、テーブルにはハロウィンの料理が並ぶのだろう。
郵便もいつもより随分と多い。ほとんどは、子供たちの両親が送って来たお菓子だ。
皆がそれらを喜んで受け取り、さらに今夜のパーティーを楽しみに、朝から話に花を咲かせる。

そんな賑やかな日でも、ハロウィンに大して馴染みのない上距離的にも遠い日本で育ち、挙句ナチュラルに時空を超えているせいで親からの贈り物なんてもらえないAは、いつもと変わりなく眠そうに朝食を貪っていた。彼女にとってあえて楽しみがあるとすれば、甘いものが好きなので、パンプキンタルトやパンプキンパイが出ると思わしき夕食のみが、常よりは期待できるということだけだった。

ふとスリザリンのテーブルを見れば、ドラコが忌々しげにハリーを睨んでいる。
先日の飛行訓練でマクゴナガルに連れて行かれたハリーは、退学になるどころか、グリフィンドールのクィディッチチームのシーカーに選ばれた。加えて彼の元には、何やら性能の良い箒らしい「ニンバス2000」が届けられた。ドラコ及びスリザリン寮の面々にはさぞ苦々しい出来事なのではないか、と寮の対立に興味の無いAも思う程、彼らの不機嫌さは分かりやすかった。

特に何も無い中、彼女に唯一起きた幸運が、「呪文学」だった。
散々発音を練習した浮遊呪文の成果を発揮する日が来たのだ。

「ウィンガーディアム・レビオーサ」

ドラコに教えてもらった通りに唱えれば、ふわり、頭上30cm程度まで浮き上がる羽。
見ればハーマイオニーも成功しており、フリットウィック先生が興奮していた。

「皆さん見てください！グレンジャーさんとカザマさんがやりました！」
「(ドラコにはお礼言わないとだ)」

褒められたAは、先生役を務めてくれた彼には十分にお礼を言おう、と心に決めつつ照れ笑いを浮かべるのであった。

夜、大広間。
沢山のご馳走が皿に現れる。日頃の分も食べておこうとばかりにタルトを3分以内で半分くらい食べた辺りで、狼狽したクィレル先生が駆け込み、ダンブルドア先生の机に辿り着く。

「トロールが…地下室に………お知らせしなくてはと思って」

そこで彼は、バッタリと気を失った。

「監督生よ、すぐさま自分の寮に生徒を引率して帰るように」

混乱する生徒を静めたダンブルドア先生の指示で、皆がすぐに寮へ戻らされた。