紫紺の彼女はもう1人の最強Ⅴ (ページ38)

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『うわぁ、、、』

元々大きな眼を
零れるんじゃないかってくらい大きくして
大水槽を眺めるA

口も開いてるし
なにこれ魚よりずっと見ていたいんだけど
僕の奥さん可愛すぎない？
そう思ってその横顔をパシャパシャ写真に撮った
気づいてないし、ウケる

「Aずっと口開いてるよ、魚と一緒じゃん」

そういうと、口を開けたまんま
僕を見るから
思わず吹き出した

『、だって、すごい、』

「くくっ、ごめんごめん、はぁウケる、Aのそんな顔、なかなか見れないからさ。」

『連れてきてくれて、ありがと。』

「いーえ。僕がAと来たかったの。ここ、すごいよね。」

一つ頷いて、Aが僕と握ってる手に少し力を入れた。

「疲れてない？イルカショーがあるから、そっちまで歩ける？」

『うん。大丈夫。』

そう言って、ゆっくりと、魚たちを見ながら歩く
Aの重たい腹を支える腰に手を添えて
エスコートする

イルカショーがよく見える席に座らせた

「A、何飲みたい？飲み物買ってくるよ。」

『じゃあ、あったかい珈琲。』

「りょーかい。ちょっと待ってて。」

そう言って近くの売店で買って戻ると
Aの周りに人だかりができているのが見えて
慌てて戻る

「あのっ、Aさんですよね！？さっき、一緒にいた男性もあなたのことを、Aって呼んでいて。あのAさんですよね！大ファンなんです！」
「妊娠したから、最近曲出してくれないんですか？また出してくれますか！？」
「次のライブは！？絶対行きます！」
「サインください！」
「握手してください！」
「わたしもっ！！」

チッ、ずっと僕がいなくなる隙を狙ってたか
髪色も目の色も違うが
確かに、全体を見れば、話している声、名前をうっかり聞けば、わかるか
最近活動を控えているから、一切気に留めていなかった
僕のミスだ

無言で人混みをかき分ける
『違います』と否定しながら怯えるA

Aに手を伸ばそうとしているやつの腕を掴めば
痛がる声に目が移る

「なにすんだよ！っ、！」
俺の目を見て、怯えるそいつ
俺をみてざわざわしだした女どもの声が耳障りでイラつきが増す

「それはこっちのセリフだよね。お腹も大きい俺の奥さんに寄ってたかって、どういうつもりか聞きてぇのはこっちなんだけど。」
さらに腕の力を強めると
泣きそうになるそいつ
仕方なく腕を離して、
Aの前にしゃがむ

「大丈夫？」

『、、うん。』
ごめん。一瞬も離れるべきじゃなかったな