7話 ページ8
私の教え子である太宰君は首領からある任務を継続させられていた。其れは実に簡単。首領の娘を護衛するだけのことだった。まだ幼い愛らしい少女。名をAと云い、元気な笑顔が印象的な娘である。然し、其れは外見だけという悲しい事実がある。少女は外見が良い。誰にでも愛想良く接し、笑顔を向ける。けれど本来のAからは掛け離れている事を私は知っている
「リンタロウ、Aが来ないんだけど。」
「嗚呼エリスちゃん!Aくんはね今新しいお友達と遊んでいるのだよ」
「友達?私よりも大切なの?」
「さあ、其れは分からないよ。直接Aくんに聞いてみたらどうだい?」
「…そうするわ。でもその前に、リンタロウ……、其の写真どうにかしてくれない?」
「え?」
愛しのエリスちゃんが見たものは私のAくんアルバムであった。其の名の通り、Aくんの写真が詰まったアルバム。多くなったなぁ、と思っていた矢先エリスちゃんから「キモイわリンタロウ」と云われ地味に傷ついた。
だってだって、私のお気に入りの子だよ?今のうちに可愛い姿を撮ってないとスグに子供は大人になるのだ。その時の姿を、そのまま残せるのは写真ぐらいしかないのだよ?
「Aは可愛い。リンタロウの気持ちも分かるけど、やり過ぎだと思うわ」
「いやいやエリスちゃん、聞いてくれ給え。私はね、娘のように可愛がっているAくんの可愛い姿を物理的に残すためにやっている云わば親の義務でもあってだね……!」
「リンタロウ……、
その必死さがキモいって云ってるんだけど」
然かも親じゃないし。エリスちゃんの容赦ない言葉が胸に刺さる。確かに本当の親子ではないが、私も子を持った親だったならばきっとこんな感情に囚われるのだろうと思った程だ。何せあの子が赤ん坊の頃から知っている少女だ、時も経てば他人であろうと情が湧く。其れが其の少女だった
然し何故ここまで執着する必要があるのか。情が湧いたとしても、所詮は他人である。血も繋がっていない。けれど娘のように想う、その感情は本物だ。私も自覚している。…だが、
それ以上に其の少女には惹かれる所があるのだ
私は"A"という少女を知っている。而して"Aくん"という少女も知っている。
云わば此違いなのだ。この二つのAという存在に、私は興味が湧いた。
太宰君ならば、其の違いに気づくだろう。而して彼もまた、Aという存在を知る。
彼が選ばれたのは、必然ではないのだ
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竹薮 - 面白いです。個人的に夢主が怖くて好きです。更新頑張って下さい。応援してます! (2018年2月17日 13時) (レス) id: 9078c77c1b (このIDを非表示/違反報告)
黒桜姫(プロフ) - 七葉さん» 有難うございます。早く原作突入出来るように頑張りますね (2017年12月6日 23時) (レス) id: 5de5d502f1 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - 続きがとても気になります!楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2017年12月5日 21時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒桜姫 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月5日 2時