検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:55,780 hit

17話 ページ20

お昼は近くの喫茶店で過ごすことにした。出掛ける時は治の格好は良く目立つため何時もは背広(スーツ)の上からパパの外套を羽織らせている。明るめの生地だから、お洒落程度に見える筈。治は何も云わずに着ているけれど、表情は迚嫌そうだ。くすっ、と笑ってみせる。其れに気づいた治は額に皺を寄せてわたしの顔を伺う。嗚呼、彼の表情を読み取るは実に面白い


「ご注文はお決まりでしょうか?」
「わたしは蜜柑果汁(オレンジジュース)かな。治はー?」
「僕はお酒にしま……、…珈琲(コーヒー)で」
「…、?、畏まりました」


お酒なんて飲ます訳ないだろう。治はわたしの頗る良い笑顔を見て目次(メニュー)を変えた。こういう所は、迚素直になったものだ。以前の彼ならば、想像もつかないだろうけど、躾かな?アハっ
そもそも喫茶店で酒を飲まないことだね。今度から徹底的に治の体調管理を正さなくてはならない。こういう時こそリンタロウを使えばいいのだけど、今はパパの事で忙しい。今頃、パパの体調を伺っているんだろう。あと僅かな命、父である彼の人の灯火も、いずれは消える。嗚呼、なんて人とは脆いのだろうか


「…あ、そうだ治。今度ね、わたしのお気に入りの酒屋(バー)に行こうよ。そこの店主に治を紹介するって約束したの!」
「へえ、酒場ですか。是非とも連れていって欲しいですね」
「うんうん、。あ、でも酒は飲んじゃダメだよ?体に悪いからね」
「じゃあなんで連れていくんですか」


何となく、いいじゃない。そう笑うと、治もまた釣られるように笑った。

彼の表情は実に面白い。人の表情を読み取ることは造作もないけれど、こうやって身内にも騙す優しい笑みを向ける者はそう多くはないだろう。彼も又その一人

然し、わたしにそれが通じないのは此処半年で分かっただろう。わたしと行動することによって彼は異常な迄に警戒心と共に"依存心"も増した。それは深く、彼の何かを変えようとしているのが今の現状と云える。「お待たせしました」と定員が持ってきた蜜柑果樹(オレンジジュース)が目の前に置かれる。果汁100%とメニューに書いてあったものだ。一口、飲んでみると口の中で蜜柑の味がじわじわと伝わってくる。嗚呼、美味しい

(彼の人)に丁度いい土産話が出来たところだった。

18話→←番外編 猫に噛まれるな



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (117 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
252人がお気に入り
設定タグ:文スト , チート
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

竹薮 - 面白いです。個人的に夢主が怖くて好きです。更新頑張って下さい。応援してます! (2018年2月17日 13時) (レス) id: 9078c77c1b (このIDを非表示/違反報告)
黒桜姫(プロフ) - 七葉さん» 有難うございます。早く原作突入出来るように頑張りますね (2017年12月6日 23時) (レス) id: 5de5d502f1 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - 続きがとても気になります!楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2017年12月5日 21時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒桜姫 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月5日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。