惹かれてしまったから。(短編集) (ページ22)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:55,811 hit

続き1 ページ22

「あぁ、そんなことより君はどうする？」

「僕ですか？んー……」

しっぽを振って考えているわんちゃん。
彼だったらどうするのか。私も気になる。

「俺も拾えないですかね。」

「何故？」

てっきり拾って育ててなんてハッピーエンドの主人公のようなことをすると思っていたから少し意外だった。

「だって犬を飼っちゃったらこうやって先生のところに遊びにこれないじゃないですか。」

「そんなにここが好きか？」

私にはわからない。野良犬を拾っても殺さないという人間に育ったのに、こんな人間を優先して考えることを。

「もちろんここも好きですが先生と居ると楽しいんですよ。」

私と一緒に居ると楽しいか。
不思議なわんちゃんだ。

「そうか。」

こんなわんちゃんの一言で胸が満たされるなんて考えもしなかった。もしかしたらこれが所謂愛というものなのかもしれない。いや、少し違うか。

ただどちらにせよ、この主人公が貰えなかったものと同じなのだろう。

「なんですか先生？そんなニヤニヤして？」

不思議そうな目でこちらを見てくるわんちゃん。
今は君がものすごく愛おしい。

手を伸ばしわんちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。
彼の頭は想像以上に触り心地が良いものだった。