惹かれてしまったから。(短編集) (ページ16)

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四月の色のあの子 kwkm ページ16

四月。

東京大学にも多くの新入生が入学してくる中、一際目立つ子が。
ショートカットでふわふわしている桜色。
俺自身もよく髪を染めるが、あんなに綺麗な色に染めたことがないのでとても魅入ってしまった。

専門学校等に行くと、明るい色に染めている人は大勢いるが、ここは東京大学。ほとんどの人が落ち着いた髪色のため、本当によく映える色だ。

にしても綺麗だなぁと、しみじみ思う。

名前はなんて言うのか？
学科はどこなのか？
どこのサークルに入るのか？

自分自身、ここまで人の事を気にすることは珍しいし、ましてや話したことも無い人になんて。

まぁどうせすぐ校内で見るだろう、少し腑に落ちない理由を付けて授業へ向かおうと歩き始める。

「あの、すみません。」

少し考え事をしながら歩いていると、女性に呼びかけられたので振り向く。

「どうしました？」

目に飛び込んできたのは綺麗な桜色。

「東京大学、広くて迷ってしまって。ここに行くにはどうしたらいいんでしょうか？」

桜色の女性が指を指すのは駒場キャンパスにある一室。

「向こうにある角を曲がって、真っ直ぐ行けば分かると思いますよ。」

「そうなんですか！ありがとうございます！」

少し足早に去っていく桜色の女性。
もう少し話したかったなんて、ね。

これが一年前、君との初めての会話。

新しい出会い、鮮やかな季節の四月初春。

桜色。

四月の色。

恋の色。

全ては鮮やかなこの季節を更に美しく彩ってくれた。

四月。

東京大学にも多くの新入生が入学してくる。

「なんか懐かしいね。」

「もう一年経ったのか。」

「二人とも相変わらずの髪色だけどね。」

「たしかに。」

今年も俺の四月は君色で染る。