同業者メンバーの愛が重すぎる!!【wrwrd】 (ページ28)

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番外編_昔話ページ28

gr_side【恋心は唐突に】

「あの人の弱みって何でしょうか」

ある日の朝食のことだった。
俺の食事を持ってきたエーミールが何気なくつぶやいた言葉。

此奴が言う「あの人」、その呼び方に当てはまる男はこの組織に1人しかいない。

A、俺のストレスの要因のひとつだ。
エーミールも俺ほどではないが、Aに散々付き纏われ、変な思いをしている1人だ。

Aに振り回されている奴はとても多い。
アイツをペットとして見るなら、一人ご主人サマがいるそうだが、誰ふり構わず好奇心(尻尾)を振り撒く男だから気に入ったやつから絡みに行く様なやつだ。

あの掴み所のない性格と会話のキャッチボールができないせいで、アイツの目に入ると「面倒だ」と思う奴が多いことだろう。
マニアックなやつもいるようだが……

「さあな」
「あら？興味ない感じですか？」

「弱みがあれば、この組織で3年間もあのままでいられないだろ」

「え～、ただそれって、誰も知ろうとはしてなかっただけじゃないですか？ほら、あの変人具合でしょ？みんな話しかけられたらなるべく早く会話を終わらせようとするじゃないですか。
だから誰もあの人の事詳しくは知らないだけですよ」

たしかに、と思わず納得してしまった。
アイツの無駄に長い話と、胡散臭い笑顔を見ると早く終わらせてしまいたくて適当に流すか無視をしてしまう。

それでも気にしないのがAなのだが。
俺は、いやこの組織にいる連中は、どれだけAの事を知っているのだろうか。

「…面白そうだな」
「おや、興味出てきました？」

口端が上がった俺を見て、エーミールは「ふふふ」と楽しげに笑う。
やっぱり俺たちは他人の懐にお邪魔している方が性に合っている。

「それでは、早速組織の方々にあの人のこと聞いてみますね」とエーミールは立ち上がって両腕を高く上げ、体を伸ばす。欠伸を噛み殺していたのは見なかったことにしておく。

良い暇つぶしにはなりそうだ。

…と思っていた、その日の夕方。