もしも世界があるならば【syp】

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「あれ、ショッピじゃん。」

「Aさん。」


私はあの日もいい人を演じていた。明るくて、みんなに慕われて。
でも心の中ではみんなのことはどうでもいいって感じる様にする、そんな人を。
だからプライベートで会社の人を見つけても声をかけないしむしろその場から離れる人だ。なのにコンビニの喫煙スペースにいた彼に何故か声をかけてしまった。たぶん、あの時の彼が、私の目に似ていたから。親がいなくなった時、鏡で見た自分の目に。


「どうしたの？何かあった？」


「…いや、何でもないっす。」


今にも消えそうな目をしている彼は今日もタバコを手に持ち吸っていた。


「何でもない事ないでしょ。まあ、私が知ったこっちゃないしあなたの気持ちがわかる訳じゃないけどさ。
死ぬ意義じゃなくて生きる意味を考えようよ。」


そのままだときっと雪に紛れて彼は死んでしまう。そんな気がした。


「…！

余計なお世話、っすよ。」


「そう？じゃあね。」


くるりと後ろを向き、やっと自分の顔を歪めることが出来た。自分でも何を言っているのか分からない。
そんな事ただの綺麗事でしかないのに言葉がするすると口に出た。なんで、あんな言葉を。こんな言葉が出た口が憎くて、何度も袖で拭きながら歩く。周囲の人の目なんてどうでもいいから早く元に戻ってよ。私の口。


別に死にたいなら死ねばいいじゃない。私はどうでもいい。
…でも、私も死にたいのに生きているのはなんでだろう。

その日ずっと持っていて、使わなかった縄に首を通したが、何故かいつまで経ってもその一歩は踏み出せなかった。




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