11 ページ11
「Aさん。
Aさんと一緒にいたいからとは別でここに呼んだ理由があるんです。」
「…聞きたくない。」
「Aさんをこの1時間で救いたいんや。あの時、俺を救った言葉を放った貴方の顔はとても悲しそうな顔をしてたから。」
「救わなくていい！」
なんでこんな人のデリケートな部分に踏み込む人がいるの。瞬間、体全体にタバコの香りがより一層鼻を通った。抱き締められている、と感じるまで数秒。
「やめて。」
口調では静かでも、全力で彼を押す。もう後10分で世界が終わるじゃないか。男女の力なのか全くビクともせず、彼のあたたかさは私の心を乱す。
なんで。
今まで何を言われてもされても響かなかったのに、なんで？
「Aさんはよく、今まで頑張りましたね。」
「何も知らない癖に。」
私の気持ちなんて、知らない。
「知らないからこそ委ねられるんですよ。」
「離れて。」
「Aさんは愛せます。誰でも。
…出来れば俺がええけど、それは貴方が決めることです。」
「愛せないって言ってるじゃない！！」
胸板に向かって1発ぽか、と殴る。
分からない。こんな気持ちを人に投げかけるなんてした事がなかった。両親が死んでも流れなかった涙が頬をつたう。
「じゃあなんで俺にあんな言葉投げかけたんですか！？あんな悲しそうな顔してたんですか！？」
「……分かんないよ。」
あんな思いはしたくない。
「もう、置いてかないで欲しいよ。」
誰か大切な人が出来る前に、殺して。
小さな嗚咽と共に本音を呟いた。ずっと言えなかった言葉。何もかも失ったあの頃の私の言葉。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みり - ん"ん"…(声にならない声) とても素敵です…食い入るように読んでました…これからも頑張ってください…！ (2019年4月11日 21時) (
レス) id: a68ddf6fc9 (このIDを非表示/違反報告)
タユ(プロフ) - 完結おめでとうございます！ぴ君良いですね！（←唐突）ラストのぴ君の長いセリフが本当に夢主ちゃんのこと愛してるんだなって思って、ちょっとじわっときました。これからも頑張ってください！ (2019年3月14日 13時) (レス) id: 2268a0f833 (このIDを非表示/違反報告)
もものす(プロフ) - 全然文才あるから安心してください…好きです" (2019年3月13日 19時) (レス) id: 7ecc545104 (このIDを非表示/違反報告)
sayaka(プロフ) - piさんの「1時間で全てが手に入っとるんっすけどね。」という台詞にグッときました。ラストも楽しみです！ふだんは感想書かずひっそりと作品を楽しんでるのですが、評価が荒れてるようでしたので、どうしても伝えたくなりました。これからも応援してますm(__)m (2019年3月13日 15時) (レス) id: 12b2318568 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ - あと上から目線で申し訳ないのですが、アンチをする人は作者様の文才が羨ましいのではないでしょうか。私としては普通に大好きな作品なので、アンチを気にせんでもええと思います。長々とすみません。 (2019年3月13日 15時) (レス) id: c8f72c9aa8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
