もしも世界があるならば【syp】

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きっと今、この世界が隕石で終わるという回避できない運命を誰もが呪っているだろう。でも、私はそれをどこか他人事のように見つめていた。
死ぬんだ。死んでしまうんだ。
その事実を聞いてもどこか現実味を帯びなかった。生きることに執着を感じていないと言ったら嘘になる。ただ、生きる理由が無かったから。
好きな人、という好きな人もいない。だからと言って殺したいほど嫌いな人もいない。きっとこれから殺人がたくさん起こって愛の確かめ合いもたくさん起こって、全てが壊れていくんだろうな。そう思うと少し寂しくなった。自分だけ取り残されたような気がして。
そんな時だった。きっと鳴るはずないだろう携帯が振動したのは。


「Aさんっすか？」


電話越しに聞こえる声はショッピとかいう私の会社の同僚。嫌いかって言われるとそうでもないし、仲がいいかと言われるとそれでもないと答える。この関係性に名前をつけるとしたら知り合い程度である。


「どうしたの。」


そんな関係である彼がどうして私に電話をしたのだろう。質問をすると息を呑む音がした。そして1拍置いて言葉が吐き出される。


「…好きです。」


ああ、そういうことか。私という人間でも好きになってくれる人がいるんだ。なんて呑気なことを考える。あと1時間だからせめて想っている人に告白しようとか、そういうアレか。振られても付き合ってもあと1時間しかない。なら告ってしまおう、と考える輩も少なくはない。

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