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一話 ページ2
ざあっ、と一際激しく風が通り抜けた。
砂煙を伴って木の葉が舞い上がる。
強い風はAの不揃いの髪も巻き上げ、思わず片目を閉じさせる。
Aは風の行先を追うようにチラリと目を向けてから、無言で隣に立つ自来也を見上げた。
見上げる相手の表情は、Aが彼に出会ってから初めて見る程に強ばっていた。
食い入るようにある一方向を見つめ、その顳顬には一筋の汗が浮かんでいる。
「…らいくん」
「A。行けるか」
Aが彼の名を呼ぶ声に被せるように、自来也が視線を彼方から外さないまま尋ねる。
何処へ、かは言わない。
「ん」
「半分でもいい。最速で戻るぞ」
「一気に行けるよ」
「っ……」
「だいじょうぶ」
躊躇うように見下ろしてきた自来也にこくんと頷くと、両手でその大きな手を取った。
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作者名:キリカ | 作成日時:2020年5月8日 19時