平穏な日々、夢中 (ページ8)

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第１０６章ページ8

No side

それはAが来てから二度目の冬の訪れ時。
我々国に一つの文章が送られてきた。

送り先、ラギア国。

ルンズェとの問題が解決した三か月後の事だった。

・

息をすることさえ忘れたグルッペンが机の上に置かれたそれを呆然と眺めていた。
隣にいるトントンも、それを持ってきた本人であるオスマンも普段決して見せないような表情。

「……どういうことだ。何故、こうなっている……？」

やっと口からこぼれた言葉も、現状を何ら変えることのできない無意味なもの。
だが、無理もない。
全てを解決したと思っていたのだから。

Aを狙っていたルンズェは滅ぼした。
害となる国家はもはや残っていない筈だったのだ。

……ラギアを除いて。

「幹部を全員集めるか？」

「……いや、それは不味い。なるべく、なるべく隠していなければ」

言葉は途切れ途切れに紡がれる。
普段通りの行動を提案したトントンの案をグルッペンは弱々しい声で否定した。

彼らがこんなにも狼狽えているのには理由があった。
敵から除外していたラギア。

その国からの1つの要求。

そもそもラギアを除外したのはルンズェでの件があったからだ。
国力もルンズェとほぼ同等のラギアは、ルンズェがあっけなく滅ぼされたことで我々国を恐れ、もう手出しはしてこない、と予想された。
が、実際は違う。

恐れるどころか、策略を練ってこちらに牙を向いてきた。
それも最悪の形で。

「……でもグルッペン、この問題は絶対に無視できないめう」

「わかっている……だからこそ、時間が必要なんだ」

「他の奴らへの報告は」

「いずれする。だが今は隠せ」

ラギアの要求はただ一つ。

「……特に、ゾムには知られるな」

『Aの身柄を受け渡せ』

。・＊・。
遅くてすみません！
新作の方もよければよろしくお願いします！
http://uranai.nosv.org/u.php/novel/rinosabu/